期待したい「元ユニコーン企業:新規上場フリー」の明日

2020年5月6日 07:18

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 昨年12月17日、フリーが東証マザーズ市場に上場した。昨今「将来の成長企業」を判断する基準として「ユニコーン企業」と称される物差しが重宝されている。「創業10年以内」で「企業価値評価額10億ドル以上」に達した「未上場ベンチャー企業」、という条件を満たす企業を指す。フリーもそんなユニコーン企業としてカウントされていた(日経新聞、昨年9月末時点の推計企業価値ランク4位)1社である。

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 主たる事業は、個人事業主や中小企業向けのクラウド型会計ソフト「freee」の提供。現場上がりの個人事業主や中小零細企業経営者が不得手とする、会計・税務絡みの諸々の作業が「知識ゼロ」でもこなせてしまうというのが特長。ソフトを購入し利用する「インストール型」と、Web(パソコン)上で入力操作を行うクラウド型に分かれるがフリーは後者組。

 同業には先に上場を果たしていたマネーフォワード(MFクラウド)と弥生会計(やよい)があるが、ユニークユーザー数(一定の集計期間内にWebサイトを訪れたユーザー数)でフリーは、NO1の実績を残している。

 日本国内の企業の90%余が中小企業。大企業と比べ生産性が低い。成長力を手にするにはITの活用が大きなカギとされている。ちなみに国内企業のクラウド普及率は「会計・税務:14.3%」「人事・労務:19.0%」とする統計もある。対して米国ではそれぞれ「52.5%」「81.2%」。

 いわば「AIソフトを活用して事務処理の簡潔化・効率化」という流れだが、普及率が低いだけに日本のマーケットでの上昇余地は十分にある。

 それを映しだすようにフリーの初値は公開公募価格2000円に対し2500円。12月24日には3575円まで買い進まれ、3000円水準まで調整も再上昇。エコナウイルス禍に大揺れの相場にあっても2月21日に4370円へ。本校作成中の時価は3000円台半ば。IFIS目標平均株価も3000円台終盤で値を保っている。

 上場後初の決算となる2020年6月期は「53.7%増収(69億4100万円)、28億7600万円の営業損失」計画で立ち上がり、開示済みの7-12月期は「売上高30億7200万円、10億8200万円の営業損失」。上々の歩みといえる。

 当面、広告宣伝費等のマーケティング費用や人件費の増加で営業損失は続こう。だが評価に値するのは前期87.0%増収/今期53.7%という着実な売り上げ増基調。顧

 客層を「従業員20-1000人」「1-19人」「個人事業主」に区分し、契約期間に応じた料金を課金しているがウオッチャーを自認するアナリストから「今期に入ってからも地域金融機関との連携を深め、中国銀行やきらぼし銀行と業務提携するなど顧客開拓の手は全く緩めていない。売上高の年平均成長率(CAGR)は113%」と聞いた。

 ユニコーン企業の躓きも伝えられてはいる。だがフリーのような中小企業の生産性を高める存在には是非にも、順調な歩みを続けて欲しい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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