倒産の危機も潜った医薬品企業、セロテープのニチバンの顔

2019年8月22日 06:26

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「セロテープ」(画像: ニチバンの発表資料より)

「セロテープ」(画像: ニチバンの発表資料より)[写真拡大]

 ニチバンは「セロテープ」で知られるテープ類大手。絆創膏や止血製品で医療用医薬品分野でも存在感を示している。

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 だが現状で同社の収益を牽引しているのは、鎮痛消炎テープ剤。一般医薬品である。「ロイヒフェルビ温」ブランドの温感タイプのシリーズ商品群。何故「好調」なのかを、アナリストはこう説明する。

 「鎮痛作用を持った非ステロイド性抗炎症薬で、フェルビナクの含有量の多さが特長。肩・腰・関節などの炎症(痛み)に対しフェルビナクは痛みに関する物質そのものの生成を抑制する」

 「外出時に貼っていても違和感のない、ベージュ色かつ無臭」

 「ウィングセパレーター方式(特許取得)で、背中や腰など貼りづらい場所でも一人で簡単に貼れる」

 「泥状タイプのハップ剤と違い粘着力に優れている」

 ニチバンの前身:歌橋製薬所は1918年、絆創膏・軟膏・硬膏の製販メーカーとして設立された。テープ類の象徴:セロテープの発売は47年。テープ分野への進出が医療用医薬品分野の契機となった。現在、次の様な商品が医療現場で使用されている。

 『サージカルテープ』: 柔軟性・透湿性に優れた不織布と透湿性の高いアクリル系粘着剤を塗布した、極低刺激性テープ。手で切れハサミいらずのテープ。医療用グローブ着用時でも使いやすいテープ。

 『ドレッシング』: 手術後の処置や創傷面の被覆保護に使用。またカテーテルの固定や穿刺部(センシブ/注射針を抜いた後の)保護(や観察)に不可欠な商品。

 『穿刺部保護』: 止血処置を一体化した商品。注射後の穿刺部保護や静脈ラインの圧迫止血などに使用されている。

 『アスカブリック』: 手術後のケア製品の総称。手術創(後)や小外傷の閉鎖や縫合部の保護。手術後の傷あとの伸展刺激・摩擦刺激そして紫外線3つから、傷あとを守る。

 ところでニチバンの歴史を振り返ると、倒産の危機に瀕した時期がある。75年前後のことだ。アナリストは「長期のストも辞さない組合の存在が大きな要因だった」とする。手元流動性も大幅に減少。銀行の援助を求めるのも困難な状況だった。

 結果から記すと現在の筆頭株主(32.5%を保有)である大鵬薬品が第三者割当を引き受け小林幸雄氏(大鵬薬品の元社長、現特別顧問)がニチバンの会長(現名誉会長)に就任し、再建に当たった。

 ちなみに大鵬薬品は「チオビタ」「ゼノール」など一般薬で知られるが、医療用医薬品でも「経口抗がん剤」「アレルギー性疾患治療薬」「失禁・頻尿治療薬」として存在感を見せている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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