『AKBINGO』終了へ

2019年8月21日 12:05

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 日本テレビで10年以上にわたって放送されてきていたAKB48の冠番組、『AKBINGO』が9月一杯で終了することが発表され、ファンの間で大きな反響が起こっている。

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 今年に入ってから、『AKB46SHOW!』(NHK)、『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)と、全国区の冠番組が次々に終了し、その予兆のようなものはないではなかった。だが、まだ全国区になる前、ほとんど赤字覚悟で、メディア出演への橋頭堡としての役割を果たしてきた番組が終了するという衝撃は、またひとしおのものがある。

 そこで今回は、この番組を含めて、AKBのメディア戦略というものを簡単に振り返ってみたい。

 元々、AKB48というグループは、劇場を起点にした会いに行けるアイドルというコンセプトで誕生したものである。

 一説には、秋元康氏ととんねるずが雑談をしていたときに、「(制約の多い)テレビでは伝えきれないものが自由にやれる場所があるといいね」という話が出て、それをきっかけにしたという話もある。当時の秋元氏ととんねるずの関係から、真っ先に出演できそうだったTBSの人気番組『うたばん』にも出演することなく、劇場公演を重ねていたのが、初期のAKBだった。

 そんななかで、ほとんど自社買取のような形で枠を作ったのが『AKBINGO』であり、『ネ申ステレビ』(CS)である。

 おニャン子クラブで、テレビ局主導のアイドルを手掛けた秋元氏としては、そのときの反省……つまり、タレントを必死に売り込んで、不本意な内容であっても出演させてもらわなければならない状態から、相手からオファーがある状態まで我慢して、あくまで主導権は自分のほうにある形にもっていきたかったのだろう。

 こうして、深夜枠とCS、ネット番組を駆使して、ブレイクに持ち込む成功例となったのがAKBであった……と、言える。

 AKBINGOでは選抜メンバーもなるべく出演させ、若手や研究生はネ申スや、有吉AKB共和国で売り出す……このように、コンセプトが明確であった時期には、その存在に意味もあった番組ではあるが、今現在のようにコンセプトそのものが崩壊し、再構築ができないまま人数だけが巨大化してしまうと、その存在は色あせたものになってしまう。

 MCを変えるなどの試行錯誤もあったが、やはり、終わるべくして終わってしまうという印象が記者には強い。

 しかしながら、これがAKBGの凋落を決定づけるものとして嘲ることは決してできないし、するべきでもない。

 好き嫌いはあるだろうが、AKB48というグループの存在を知らない人はもうほとんどいないわけで、冠番組で認知度を高める段階が終わっただけの話。むしろ、初期のコンセプトに立ち返って、メンバー1人1人が自分の腕1本で芸能界への残留、そしてブレイクを勝ち取る姿に帰っただけという見方だってできるのだ。

 それはメンバーにとっては、茨の道ではあるだろうが、軽い気持ちでテレビに出てちやほやされたいから……という甘い認識でグループに入り、スキャンダルや問題を起こすようなメンバーをふるいにかけるチャンスでもある。

 AKBの第2章が始まったと思えば、楽しみも増大するのではないだろうか?(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

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