シャコガイは親の糞から共生する褐虫藻を取り込む 広島大の研究

2019年7月23日 10:58

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ヒメジャコ(左)と放出された糞(右)。(画像:広島大学発表資料より)

ヒメジャコ(左)と放出された糞(右)。(画像:広島大学発表資料より)[写真拡大]

 シャコガイは大型の二枚貝である。だがその生態は貝というよりはサンゴに近く、光合成をする褐虫藻(ゾーザンテラ)と共生し、その生産物に依存して暮らしている。彼らが産まれた後どこから共生する褐虫藻を取り込むのかは謎であったのだが、実は親貝の「糞」からそれを取り込んでいた、というのが広島大学の今回の研究である。

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 シャコガイの仲間は2属12種いると言われている。もっとも大きいのはオオジャコガイと言い、全長2メートル近くにも達する地球上で最大の二枚貝である。食用になり、国と地域によっては珍重されているので、いくつかの種のシャコガイは絶滅危惧種となっている。今回の研究に使われたのは、ヒメジャコという種類の小型のシャコガイである。

 広島大学大学院統合生命科学研究科小池一彦教授と同大学大学院生の森島慎也氏らのグループは、ヒメジャコの幼生がどこから褐虫藻を取り込むのかについて検討した。サンゴの8割以上、シャコガイは全ての種において、親から褐虫藻を受け継ぐことはできない。

 ちなみにサンゴの放出する褐虫藻は海水中に存在するのだが、これは既に消化されてしまっていたり、活性を失ってしまっていたりするため、共生の源として利用することはできない。

 今回研究グループが成体のヒメジャコから放出される糞を調査したところ、ここに未消化の褐虫藻が大量に含まれていることが分かった。その褐虫藻を調査したところ、シャコガイに共生している状態のものと変わらない光合成活性を持っていた。これらは、シャコガイの中で増えすぎた褐虫藻が「オーバーフロー」したものだと考えられた。

 孵化したばかりのヒメジャコ幼生にこの糞を与えたところ、9日目にして30%程度の幼生が褐虫藻を取り込み、14日目にして5%程度が共生状態を確立することに成功した。なお、糞に手を加えず、そのまま与えた場合がもっとも共生の確立する確率が高かったという。

 今回の研究は、謎に包まれているサンゴの褐虫藻ソースについても示唆を与えるものであり、あるいは珊瑚礁の保全にも役立つかもしれないという。

 研究の詳細は、PLOS ONEにオンライン掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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