ソフトバンクGが抱える、スプリントの合併問題 迷走の行方は?

2019年6月14日 12:08

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 米携帯4位でソフトバンクグループ(ソフトバンクG)傘下のスプリントと、同3位のTモバイルUSの合併問題を巡る迷走が更に激しくなってきた。

 18年4月29日に経営を統合することで合意に達したスプリントとTモバイルUSは、1年後の19年4月29日を完了期限と設定していた。2社が合併を実現するためには、米連邦通信委員会(FCC)と米司法省、両方の承認が必要となるが、当初はどちらも慎重な姿勢を示していた。

 4社体制で推移して来た米携帯電話業界が、3社に集約されることにより寡占のリスクが発生し、競争が低下して値上げやサービスの低下につながることを懸念した当局が、合併の承認を渋っていると伝えられてきた。

 5月に入って審査機関の一方であるFCCは、スプリントとTモバイルUSが農村部での通信網を整備し、プリペイド事業に関しては売却するとしたことを評価する姿勢に転じた。FCCは寡占のリスクよりも、米国がグローバルで展開されている5Gの激しい競争を勝ち抜くことを優先したようだ。

 昨年秋には米通信首位のベライゾンが、5Gで家庭向けブロードバンドサービスを一部都市で開始した。今年4月にはスマートフォン向けにも開始。通信事業者にとって5Gへの移行は最重要課題の一つだが、投資負担も大きい。

既にスプリントの有利子負債は4兆円を超える危険水域で、FCCに提出した書類には「当社(スプリント)は競争力を維持できない」とまで記載されている。脆弱な通信網がユーザーに愛想を尽かされ、他社に倍する解約率に喘ぐという負のスパイラルの真っただ中にある。

18年3月期の決算で8億ドルの黒字だった純現金収支は、19年3月期には11億ドルの赤字に転落した。今後収支が改善する見込みはない上に、20年3月期には43億ドルの債務償還が迫るという待ったなしのピンチである。

 FCCの関門を乗り越える見通しが立ったスプリントとTモバイルUSとの合併問題は、2つ目の関門である司法省の判断が注目されることになった。司法省は独自の立場で、日本の独禁法に相当する反トラスト法との整合性に問題意識を持っていると伝えられていた。

 ところが11日、ニューヨーク州とカリフォルニア州を中心とする10の自治体が、スプリントとTモバイルUSの合併差し止めを求めて裁判所に提訴したことが明らかになった。反対の主旨は「サービスの低下と料金の引き上げが懸念される」ということだ。

 連邦政府の司法省の判断が示される前に、有力な州政府の司法長官が「反対」の意思表示を明確にした影響は大きいと見られ、少なくとも係争中に司法省が判断を示すことは困難であろう。数年後に判断が示された時に、5Gに乗り遅れたスプリントがどんな状態にあるかを想像することは難しい。

 ソフトバンクGの孫正義会長兼社長は以前、「子会社(スプリントが念頭にあるだろう)の負債は親会社として弁済する義務がない」と、予防線を張って本体への波及防止を試みているものの、スプリントの行く末とソフトバンクGが無関係であることは有り得ない。デリケートな均衡が「何か」をきっかけにして、予期しない過剰な反応に進むことは様々な事例で学習済みだ。

 残された時間が多くないスプリントにとって、試練の日々が続く。孫正義会長兼社長の憂鬱が晴れる日は、いつになるのだろう?(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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