JSTや東大など、史上初の磁場による干渉を生じない電子顕微鏡を開発

2019年5月26日 07:26

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原子分解能磁場フリー電子顕微鏡(MARS)。(画像:科学技術振興機構発表資料より)

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 最初の電子顕微鏡が発明されたのは1931年のことである。以来88年、未解決の難問があった。磁性材料を非破壊で観測する電子顕微鏡の開発である。今回、科学技術振興機構(JST)、東京大学、日本電子の共同開発チームが、ついにこれに成功したと発表した。

【こちらも】東大など、世界最高速の共焦点蛍光顕微鏡を開発

 電子顕微鏡は現在の科学においてもっとも高い分解能を持つ顕微鏡である。2017年に東京大学が開発した世界最高性能の電子顕微鏡は、水素原子の半径(53ピコメートル、ピコは1兆分の1)よりも小さいものを見分けることができる。

 光学顕微鏡は光学ガラスをレンジにして物体の拡大像を得るものである。一方電子顕微鏡は、強い磁場の中に試料を入れて観察する、というのがその基本原理である。従って、磁石や鉄鋼などはその磁場によって構造が壊れてしまい、原子構造を観察することが困難であった。

 なんとなれば、電子顕微鏡では強力な磁場そのものをレンズに用いるからである。磁場の中に電子を入射すると、ローレンツ力によって電子は曲がる。この現象が、レンズとして作用させることができるのである。強い磁場を使った対物レンズの性能が電子顕微鏡の心臓部である。

 前述のように、磁石、鉄鋼材、磁気ヘッド、磁気メモリー、スピンデバイスなど、磁性を持った物体は電子顕微鏡のレンズの磁場と材料の磁性との干渉によって壊れたり、大きく変化したりしてしまう。だが、磁性材料やデバイスはナノテクノロジーの分野で重要なマテリアルであり、その構造評価を行うニーズは高い。従って、磁性材料の電子顕微観察は長年、電子顕微鏡開発の最大の難問として解決が求められてきたのだ。

 今回開発された磁場フリー電子顕微鏡「MARS」は、簡単に説明すれば上下の2つのレンズが試料の上で打ち消し合う磁場を発生させ、磁場フリー環境を構築するというものである。これを用いると、電磁鋼板のような原子観察が極めて困難であった材料でも、電子顕微鏡で観察することが可能になったという。

 なお、研究の詳細は、英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版で公開されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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