東大、植物が「匂いを嗅ぐ」機構の一端を解明

2019年4月9日 09:06

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植物においては転写制御因子が「匂い受容体」として機能する。(画像:東京大学発表資料より)

植物においては転写制御因子が「匂い受容体」として機能する。(画像:東京大学発表資料より)[写真拡大]

 植物にも「匂い物質」を感知する機能がある事実は以前から知られていた。しかし鼻や神経系を持たない植物が、どのようにそれを感知しているのかは未知の問題であった。今回東京大学の研究グループは、匂い物質と結合して遺伝子発現制御に関わる転写制御因子を特定し、その機構の一端を解明することに成功したと発表した。

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 自然環境下において、昆虫がある植物を食べると、その周辺に生えている別の植物が昆虫に食べられにくくなると言う事実が知られている。動物は、天敵などの匂いを感じるとその匂い情報に対して適切な対処行動をとる。これは鼻の奥にある嗅覚受容体で感知されるわけだが、一方植物においても、食害を受けた植物が発する匂いの情報を別の植物が受け取って、何らかの防御手段を講じる、という事実が1980年代に発見されている。

 一例として、リママメの葉がダニに攻撃されると、ある匂い物質を放出する。これと同じ合成物質を無傷のリママメに浴びせると、防御応答遺伝子の発現量が上昇するという2000年の研究がある。

 今回の研究では、タバコ由来の培養細胞であるBY-2を用い、植物から放出される匂い物質がどのような抵抗性遺伝子誘導活性をもたらすのかを検討した。結果としてアロマオイルなどに含まれるβ-カリオフィレンと、これに似た構造の匂い物質が、とある抵抗性遺伝子の発現を3~6時間で誘導するという事実が見いだされた。

 結果として、TOPLESSという転写制御遺伝子が、β-カリオフィレンを「鍵と鍵穴」のように認識するタンパク質であり、これが匂い検出の一つの機構として働いていることが明らかになったのである。

 この研究を応用すれば、香りを利用し、食害に強い植物を生み出すことも可能であると言う。

 なお研究の詳細は、「the Journal of Biological Chemistry」にオンライン公開されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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