地獄の環境でついにマラソンがスタート! 「いだてん」12話レビュー

2019年3月31日 20:06

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■四三がついに戦いの場に降り立った12話

 3月24日に放送された「いだてん」の12話。前回は四三と共にオリンピックに参加している弥彦の挑戦が描かれ、まさに日本の五輪スポーツ出発点ともいえる象徴的なシーンがじんわりと感動をもたらしてくれた。そして今回は、満を持して四三の挑戦が描かれたが、想像を絶する体験になっているのが伝わってくるエピソードだった。

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■いよいよ四三の挑戦がはじまる

 ストックホルム五輪において、ついにマラソン種目の日がやってきた。四三(中村勘九郎)は落ち着かない気持ちを抑えながら会場へ向かうも、現場で指揮を執る大森監督(竹野内豊)は未だに体調が回復していなかった。ついには歩くことすら難しくなるも、その姿を見て四三は身体の弱かった父を思い出し、彼をおぶって会場まで向かうことを決めた。

 一方、四三の地元である熊本にいる実次(中村獅童)の元に、スヤ(綾瀬はるか)がやってきていた。彼女は四三に縁起物の鯛をどうしても届けて欲しいと頼むのだが、当時ではストックホルムまで鮮度はおろか食べられる状態を保つことは不可能だった。そこでスヤは、四三を応援するため現地で宴会を行おうと言い出すのだった。

 スヤたちが宴会を開く中、やっと会場に着いた四三は急いで身支度を整える。緊張と焦りからなかなか足袋が履けないまま、マラソン開始を告げる合図が会場に鳴り響いた。合図と共に選手は一斉にスタートをはじめ、四三はその軍団から遅れる形でスタートすることになった。

■過酷な環境、見えるのは幼少期の自分

 集団から遅れてスタートした四三だが、独自の呼吸法もあってどんどん順位を上げていく。だが日本と違う気候と暑さに疲労が蓄積し、意識がどんどん朦朧となってくる。他の選手もあまりの環境に次々と倒れてしまい、リタイア選手も続出していく。

 その中でも四三は走り続けるも、彼の前にときおり幼少期の自分自身が降り立つ。幼少期の自分は乱れる呼吸を整えるように助言を与え、その言葉を聞くたびに四三は自分のペースを取り戻すことができた。徐々にペースが戻ったように感じた四三だが、それでも意識がはっきりすることはなかった。

 ついに盟友ともいえるラザロまで抜くが、そのときすでに四三の体力は限界だった。四三は日射病となって正常な判断もできず、ラザロが戻るように促すもルートを外れてしまった。その結果、四三はスタジアムで待つ嘉納治五郎(役所広司)、大森監督、弥彦(生田斗真)の元へ戻ることができなかった。

■「すいません」を繰り返すばかりの四三

 帰ってこない四三を探し始める治五郎たちだが、一向に見つかる気配がない。諦めて警察に依頼するほかないと寄宿舎に戻ってみると、そこで四三は眠っていた。彼は日射病で倒れていたところを、農家の人に保護された後にスタッフによって寄宿舎に戻ってきていたのだ。田島(ベンガル)からひどく責められる中で四三が謝り続ける中、一緒に戦った弥彦は彼を擁護し、治五郎は走ったことに健闘を称えた。

 四三の挑戦をたっぷり1話かけて放送した12話。日本人にとって何もかもが初めての中、当時は死人さえ出る可能性のあるマラソンに挑戦する四三の緊張感がたっぷりと伝わってきた。同時にその彼の精神を称える仲間の重要性も映し出し、真のスポーツマンシップも垣間見える内容だった。

 「いだてん」はNHKにて毎週日曜日20時から放送中。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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