シオノギ、規模に見合った重点開発戦略で7期連続の最高経常利益更新に挑む

2019年2月7日 19:52

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 塩野義製薬(シオノギ)は1月23日、ペプチドリームとの間でペプチドー薬物複合体創製に関する包括的な共同研究契約を締結したと発表した。

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 シオノギは今回の共同研究で脳を標的とした創薬の新たなアプローチの確立を目指しており、インフルエンザ感染症用「ゾフルーザ」の開発が一段落した後の持続的な成長に向け、開発候補品の充足を目指した戦略的事業投資の一貫である。

 シオノギは、大阪市道修町にて塩野義三郎によって創業された和漢薬専門店「塩野義三郎商店」として出発したが、西洋医学の普及に伴い1886年に直輸入の洋薬専門店へ切り替えた。その後他社も直輸入に追随してきたため製薬研究体制を整え、1909年に新薬第1号健胃制酸剤「アンタチヂン」の製造・販売を開始し、薬を量る分銅マークを「正確」「正直」「信頼]を表す商標として登録した。

 1943年には製薬中心の事業であることを明確にする「塩野義製薬株式会社」へ社名を変更した。

 つねに人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供するという基本方針のもと、医薬品、臨床検査薬・機器の研究、開発、製造、販売を手掛け、規模に見合った絞り込み戦略で躍進するシオノギの動きを見ていこう。

■前期(2018年3月期)実績と今期見通し
 前期売上高は前年よりも58億円増の3,447億円(前年比2%増)、経常利益は6年連続最高益更新となる1,387億円(同13%増)であった。

 売上増の事業別要因としては、HIV(エイズ)ロイヤリティが大きく伸びてロイヤリティ収入が394億円、製造受託が48億円、一般用医薬品が5億円増と合計447億円の増収に対し、安価なジェネリック医薬品の想定以上の浸透などで国内医薬品が188億円、海外子会社/輸出が米国のジェネリックロイヤリティ収入減少により56億円、前期に長期収蔵品の移管対価があった反動減でその他が145億円減で合計389億円の減収によるものである。

 今期上半期売上高1,682億円(同2%減)、経常利益701億円(同7%増)実績の中、今期見通しは売上高が当初計画よりも75億円上方修正の3540億円(同3%増)、経常利益は85億円上方修正の1,485億円(同7%増)を見込んでいる。

■中期計画(SGS2020)による推進戦略
 創薬型企業として成長するために、選択と集中による次の戦略を推進する。

 1.成長基盤を支える盤石なロイヤリティ等収入の安定確保
 ・HIVフランチャイズ、クレストール、ゾフルーザに関するロイヤリティ収入: 前期1,441億円 -> 今期1,640億円。

 2.成長要因の強化
 ・戦略的事業投資: ゾフルーザの成功に次ぐ感染症、疼痛、神経、代謝疾患、未開拓分野新薬へ重点投資し、2020年以降に上市可能になるよう開発強化。
 ・国内営業体制の強化: 医薬情報提供者(MR)の疾患ごとの専門性向上とインターネットでの医薬品情報提供活動を強化。
 ・海外事業の強化: 米国で疼痛、神経領域の価値最大化と未開拓分野新薬承認の迅速化、中国市場への展開。
 ・研究開発の加速: 感染症、疼痛、神経領域、未開拓領域への開発加速。
 ・生産グループ会社6社設立による企業価値最大化: 開発した新薬を高い品質を確保しつつ、グローバルで競争できる価格で製造し、併せて他社の治験薬製造などを受託。

 ゾフルーザの開発に目途をつけ、医療・社会グループに応える画期的新薬創製と医療経済性の両立を目指して、次の成長ドライバーの創出に挑むシオノギの動きから目が離せない。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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