東芝、将来予測値を算出するエッジ向けAIを開発 リアルタイム制御に期待

2018年12月13日 18:40

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長期記憶と短期記憶のモデル構築(写真:東芝の発表資料より)

長期記憶と短期記憶のモデル構築(写真:東芝の発表資料より)[写真拡大]

 東芝は12日、社会インフラや工場のデータストリームから高精度に将来予測値を算出する人工知能(AI)「Online Prediction Method of Stream Data with Self-Adaptive Memory(OPOSSAM)」を開発したと発表した。

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 AIやビックデータ解析の目的は、データ分析・解析までの時点で何が起きているかの知見を得ること、データ分析・解析の結果から何が起こるかを予測すること、将来の予測から指示的な支援を得ることまで、多岐に亘る。新たにAIやビックデータ解析を活用する側は、将来の予測や指示的な支援を期待するが、その技術の有用要素の一つがモデル構築だ。

 本技術は、クラウド上での将来予測ではなく、エッジデバイスでの稼働を想定したリアルタイム処理が可能な将来予測だ。そのためのモデル構築のポイントは、直近の短期的な時系列変化の傾向に加えて、過去の繰り返し傾向を学習する長期記憶を併せてバランスを保つことだ。そして、将来を高精度に予測する。

 例えばある工場で、設備に設置された多数のセンサーで製品の品質や稼働状況をビックデータ解析していたとしよう。通常、工場では日々品質改善が実施され、工場の稼働率は改善されていく。この時、ビックデータ解析では、人的な品質改善による部品の品質向上が起きたのか偶々品質が良かったのか判断できない。そこで、直近の時系列変化と過去の繰り返し傾向をモデル化し、AIに採り入れた。

 詳細は、米シアトルで開催中のIEEE International Conference on BIG DATA 2018にて発表した。

●OPOSSAMの特長
 交通インフラなどの公開ベンチマークデータに適用した結果、従来技術と比較し、13%の精度向上を確認。

 加えて、エッジデバイスでの稼働を可能にするために、メモリに蓄積するデータを削減。具体的には、長期記憶には代表的なパターンのみを選定して保管。逐次観測される実測値と予測値との誤差に基づき、短期記憶と長期記憶の分析時の重み付けをリアルタイムに自動調整する。

●エッジデバイスでの将来予測(東芝、OPOSSAM)のテクノロジー
 AIやビックデータ解析での将来予測の進化は、大きく2通りに分化すると思われる。予測結果に基づきリアルタイムな制御が必要な領域とリアルタイム性を必要としない領域だ。

 特に前者のリアルタイム性を必要とする領域では、エッジデバイスでの予測・制御が重視される一方で、エッジデバイスが持つメモリに制限がある。

 今回の長期記憶と短期記憶を分けるモデルは、人間の記憶管理に着想を得たようであり、記憶データの削減の代表的な方策の一つとなる可能性を秘める。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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