最初に発見されたクエーサー その内部構造が明らかに 国際研究グループ

2018年12月5日 20:34

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ハッブル宇宙望遠鏡の観測によるクエーサー「3C 273」のイメージ。(c)ESA/Hubble & NASA

ハッブル宇宙望遠鏡の観測によるクエーサー「3C 273」のイメージ。(c)ESA/Hubble & NASA[写真拡大]

 マックスプランク地球外物理学研究所は11月29日、南米チリの天文台からの撮像により、クエーサー「3C 273」の内部構造を捉えたと発表した。

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■約24億光年離れたクエーサー

 おとめ座に位置するクエーサー「3C 273」は、地球から約24億光年離れた場所にある天体だ。1963年に蘭天文学者マーテン・シュミットによって発見され、歴史上、最初に確認されたクエーサーとして知られる。「3C 273」は太陽系と同程度の大きさであるにもかかわらず、1兆個もの恒星よりも明るい光を放出する。

 「3C 273」は、超大質量ブラックホールに引き込まれる熱い塵やガスの運動により発生すると考えられている。ところが非常に明るく輝くクエーサーは地球から遠く離れた場所に位置するため、光学望遠鏡ではその内部構造を確認できなかった。

■4基の望遠鏡で高解像度の観測に成功

 ヨーロッパ南天天文台(ESO)をはじめとする複数の研究機関のメンバーから構成される研究グループ「GRAVITY collaboration」は、「3C 273」内のブラックホールに非常に近い距離に位置する熱いガスを、高解像度で観測することに成功した。

 ESOが運営する南米チリのパラナル天文台は、超大型望遠鏡(VLT)を設置している。4基の望遠鏡を結合する仮想望遠鏡「GRAVITY」は、超高解像度で遠く離れた天体を検出できる。GRAVITYは、月の表面上に置かれた1ユーロのコインを識別できるほどの超高解像度をもつという。

■天の川銀河外の大質量ブラックホールが初めて明らかに

 ブラックホール周辺のガスの運動や大きさの情報は、ブラックホールの質量を測るうえで重要な情報だ。「3C 273」の大質量ブラックホール周辺のガスが100光日から400光日の半径の円盤であることは、従来の方法で明らかだった。今回、GRAVITYの観測により、ガスの色からその円盤が軌道を描いて運動していることが判明した。これにより、「3C 273」の大質量ブラックホールが太陽の質量の約3億倍だと推定された。

 クエーサーの進化は銀河の成長と結びついているため、宇宙の歴史において重要な役割を果たす。天文学者らは巨大な銀河の中心には大質量のブラックホールがあると想定しているが、これまでわれわれの住む天の川銀河だけしか詳細な研究が実施されなかった。今回の報告は、天の川銀河外の大質量ブラックホール周辺で起きていることが明らかとなった初めてのケースだ。

 研究の詳細は、英科学誌Nature11月28日号に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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