深宇宙を旅する探査機、その通信方法とは JAXAの新深宇宙探査用地上局

2018年11月27日 22:05

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 「深宇宙」とは、電波法によれば、『地球からの距離が200万キロメートル以上である宇宙』のことを言う。200万キロメートルとは、例えば地球と月との距離は約38万キロメートルであり、今年7月地球に接近した火星は、最接近時の地球との距離は5,759万キロメートルだった。

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 惑星・小惑星などの天体に探査機を送り、地球から遠く離れた場合、その探査機のデータの送受信を地球上で行うアンテナが必要になる。日本で唯一の深宇宙探査用地上局(GREAT))は長野県佐久市にある。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、同市に新しい深宇宙探査ミッションのためのアンテナを建設している。新しいアンテナの名称は「美笹深宇宙探査用地上局」という。使用開始日は2019年12月の予定だ。口径54メートルの鏡面修正カセグレンアンテナとなる。現在は「口径64mアンテナ(64mアンテナ)」を使用しており、30年以上もの間JAXAの深宇宙探査ミッションを支えてきたが、すでに寿命を大幅に超えている。新しいGREATは、最新技術により64メートルよりアンテナ口径を縮小しつつも、「64mアンテナ」と同等以上の受信能力を持っている。

 2020年(はやぶさ2の帰還時)は、小惑星リュウグウが地球に近づく時で、地球からの距離は約900万キロメートルである。探査機「はやぶさ2」は、あらかじめ円盤状の通信アンテナを2種類搭載しており、Xバンド(約8GHzの周波数で振動する電磁波)と、Kaバンド(約32GHzの周波数の電磁波)の2つである。

 しかし、Xバンドは既存の「64mアンテナ」で送受信出来るが、Kaバンドの利用は「美笹深宇宙探査用地上局」を待たなければならない。KaバンドはXバンドに比べて、同じ時間帯に約4倍のデータを伝送することができる優れた能力を持っている。しかし通信が天候に左右されやすい(降雨減衰が大きい)などの問題点もある。

 美笹深宇宙探査用地上局の作業状況が27日、JAXAの公式サイトに掲載された。アンテナ組立工事(主反射鏡部・ステイ)が13日から行われ、アンテナ機器室(電気工事)、日よけパネルの取り付け、敷き鉄板の撤去・搬出などが行われた。また、建設の様子やアンテナと満点の夜空などの美しい画像や動画も新しく掲載されている。

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