株式投資は博打などではない (3)

2018年11月15日 11:39

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 中長期構えで「資産形成」銘柄を発掘する手だてとして、連続増配企業に着目するのも有力な手段と考える。突発的な追い風が吹き2期・3期連続して増配をする企業の類ではない。例えば10期以上の長きに亘り連続して増配を行っている企業である。

【前回は】株式投資は博打などではない (2)

 前にも記したが米国の株式市場を代表する株価指数というと、「ニューヨークダウ」「S&P500種株価指数」がある。前者は、「米国企業のなかで超優良と目される30企業を構成銘柄とした株価指数」、後者は「ニューヨーク証券取引所・NASDAQ市場に上場する企業のうち、代表的な500社で構成するインデックス」。対して知名度では上記2つの株価指数には劣るが、プロの投資家筋に注目されている株価指数に通称『配当貴族株指数』がある。S&P500の構成企業の中から、さらにある基準で絞り込まれた企業群のインデックスである。基準とは「4半世紀以上に亘り連続増配を続ける企業」であること。毎年年末に見直しが行われる。現在の構成企業は51社。日本でも馴染みが深いコカ・コーラ、ジョンソン&ジョンソン、P&G、スリーエム、ペプシコーラ、ウォルマートなどが含まれている。

 25年以上も連続して増配を続けるとなると、増配原資に繋がる着実な利益の積み重ねが必要になる。2008年9月15日に詳細は他に譲るが、米国の代表的な投資銀行だったリーマン・ブラザーズが破綻した(リーマン・ショック)。一気に、世界的な金融危機懸念が膨らみ株式市場は大幅な下落局面となった。現在では世界の主要株式市場の代表的インデックスは、リーマン・ショック前の水準を回復しているが、いの一番に回復したのが「配当貴族株指数」だった。その意味するところは、あらためて説明を要さないだろう。

 翻って、日本企業の連続増配事情はどうか。前期まで10期以上連続増配を続けている企業がある。最長は花王の29期。

 花王は傘下のカネボウ化粧品の「白斑」問題(表面化:2011年10月)に大きく揺さぶられ、化粧品部門の売り上げが急減した時期がある。12年12月期にカネボウ化粧品の自主回収費用・補償費用等を特損に計上、期中に収益計画の下方修正を強いられた。が、花王は同期、下方修正数値を上回り4期連続の増収増益となり期初計画通り2円増配(24期連続増配)を実施している。同社の総務部では、「連続増配にはこだわりを持っている。FCF(期末の現金収支)の使途については、優先順位を決めている。1番目が成長のための投資。2番目が安定かつ継続した配当原資だ」
優等生的言辞ではあるが記した様な状況下でも24期連続増配の実績を残し、そしてその後も増配を続けている。目下は「成長分野」と位置づけ注力してきたコンシューマープロダクツ部門(ベビー用紙おむつ等)の伸長が牽引力となっている。

 前12月期まで5期間の平均営業増益率は40%。13年12月期の始値(2290円)で花王の株を買い本稿作成時点まで保有していると、株価上昇率だけで3倍以上になっている。今18年12月期についても、「3.4%の増収、5.0%の営業増益、3.4%の最終増益、10円増配120円配」計画で立ち上がった。10月中旬「計画達成に黄信号」といった指摘が流れた。第3四半期の期初計画に対する進捗率が66%水準に止まったためだ。だが私は、「花王の収益構成の在り様を捉えているのか」と反論したい。前期の第3四半期の期初計画比進捗率は68%水準である。増配は維持されるとみる。

 失礼を顧みず正直に記すと、別表の中には「なんでこの会社が10期以上も連続して増配できるのか」と戸惑いを覚える企業もある。ユー・エス・エスである。中古車のネットオークションの草分け的存在であり、業界首位。

 市場環境は厳しい。自販連発表の中古車販売台数の推移が、それを顕著に物語っている。1997年の570万台をピークにジリ貧傾向が進み、2006年には500万台を、そして09年には400万台も割り込んでいる。12年にはエコカー補助金効果で下取り車数が増加、中古車販売台数は400万台を回復したが13年以降は300万台余りにまで落ち込んでいる。

 そうした状況下でユー・エス・エスは過去5期間で見ても平均営業増益率4.42%と着実な利益動向を示し、「21期連続の増配」を実現している。同社のIR担当者は増益の背景を「成約率の上昇」に加え、「(下取り業者の)出品点数に応じた手数料の割引制度の見直し、衛星TVによる落札手数料の引き上げ」とした。業界首位(シェア約3分の1)ゆえに推し進められる策の浸透が功を奏したというわけである。

が、業界の首位となるための手綱を同社は決して緩めようとしない。IR担当者は、こんな言葉を口にした。なんとも興味深いし、日本の企業経営者に聞かせたい。

 「当社は配当性向(配当金÷一株当たり利益)目標45%を掲げており、社長の安藤之弘は連続増配を意識した経営をやっている。実現するためにはどれくらいの税引き後利益が必要かを、毎期の経営戦略・経営戦術を決める基軸としている。連続増配が、うちの経営を牽引していると言って決して過言ではない」

 「配当」を重視する外国人投資家が、ユー・エス・エスの発行済み株式の35%超保有しているのも頷ける。時価は全体相場の下落に押され2000円トビ台水準だが、前回記したIFIS目標平均株価「割安」の但し書きつきで2328円。買い場を示唆している。

 長期に亘り連続増配を続ける企業という事実を足掛かりとする中長期構えの株式投資は、「株式投資はリスクを伴うが博打ではない」という一つの証左と考える。また連続増配企業の検証は、時として連想ゲーム的に好パフォーマンス企業に投資家を導いてもくれる。次回はその当たりを記す。

『連続増配主要企業』

20期以上: 花王、ユー・エス・エス、小林製薬
15期以上: トランコム、サンドラッグ、リンナイ、ユニチャーム、リロ・グループHD、サンエー、ニトリHD、栗田工業、ロート製薬、アルフレサ
10期以上: カルビー、コシダカHD(記事:千葉明・記事一覧を見る

続きは: 株式投資は博打などではない (4)

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