NASAの「ボイジャー2号」41年目、太陽圏を抜け星間空間へ近づく

2018年10月8日 08:41

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ヘリオスフィアに対するボイジャー1号(Voyager 1)とボイジャー2号(Voyager 2)のプローブの位置を示す図。(c) NASA / JPL-Caltech

ヘリオスフィアに対するボイジャー1号(Voyager 1)とボイジャー2号(Voyager 2)のプローブの位置を示す図。(c) NASA / JPL-Caltech[写真拡大]

 宇宙探査機「ボイジャー2号」が、そろそろ太陽圏を脱出し、星間空間に近づいているとアメリカ航空宇宙局(NASA)はWebサイトで報告した。8月上旬に比べて、下旬では宇宙線が約5%増加したという。このまま太陽圏を脱出して星間空間に入れば、太陽系(太陽圏を出た部分を太陽系と定義した場合)を脱出した人工物としては、ボイジャー1号についでボイジャー2号が2機目となる。

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 1977年、NASAによって打ち上げられた無人宇宙探査機ボイジャー2号は、1号とほぼ同時に打ち上げられた。ボイジャー2号の現在位置は、地球から約177億キロメートルで、地球から太陽の距離を1天文単位とすると、118天文単位以上の距離となる。秒速約15.5キロメートルで星間空間を目指しており、原子力電池を電力とする機体の通信は、2030年頃までは地球に届くと思われる。

 2機のボイジャー計画が発足したのは、木星・土星・天王星・海王星の4惑星の配置が、約175年に一度という、またとない条件を満たしていた時期であり、観測に適していた。土星を念入りに調べたボイジャー1号とは別行動をし、ボイジャー2号は、天王星と海王星の観測を行った。今現在でも、海王星の観測はボイジャー2号のみである。

 ボイジャー1号の場合は、今回のボイジャー2号と同じように宇宙線の増加があってから、3カ月後には太陽圏(もしくは、ヘリオポーズ)を脱出した。ヘリオポーズを脱出した星間空間はさらに宇宙線が降り注ぐ世界になる。しかし、ボイジャー2号の場合は、太陽の活動が関係している可能性がある。今現在、太陽サイクル(およそ11年周期を持つ太陽黒点活動サイクル)が終わる時期であり、黒点数の減少などの太陽の活動の低下により、宇宙線が強く降り注ぐことになる。今回の宇宙線増加はこのことが影響しているとも考えられることから、ボイジャー2号が、同じようにすぐにヘリオポーズを脱出するとは限らないと、関係者は考えている。

 100~200天文単位以上の場所で、太陽風がぎりぎり届く範囲と宇宙線(星間物質)の混じり合う範囲をヘリオシースと呼ぶ。また、太陽風がなくなり星間空間と完全に別れた境界部分をヘリオポーズと呼ぶが、そのヘリオポーズの存在を見つけるのはボイジャー1号のミッションの1つだった。ボイジャー1号は2012年8月頃にヘリオポーズ(ヘリオスフィアともいう)を脱出し、星間空間の航行に入っていることがNASAから発表された。

 それから6年たった今、ヘリオシースを航行中のボイジャー2号が太陽系を脱出するまでには、もう少し時間がかかりそうだ。

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