乃木坂46若月佑美が背負っていた十字架を外す日

2018年10月5日 19:29

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 先日、11月一杯までの活動で乃木坂46からの卒業を発表した若月佑美。そのタイミングがエース西野七瀬の卒業発表直後であったこともあり、年明けから続く『卒業ラッシュ』という言葉の一要素として語られてしまうのは仕方のないことだし、当記事でもそう表現させてもらってはいるのだが、それだけで済ませてしまうのは、あまりも寂しく感じてしまうのは記者だけだろうか?

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 それくらい、若月佑美と乃木坂の歴史は濃度が高く、また物語性もあるものだと思うので、今回はあえて彼女のことをもう一度振り返ってみたい。

 若月といえば、「キャラ渋滞」と言われるほど、様々なキャラクターづけをされ、さらに自分でも試みるメンバーではあった。

 初期は「みゅうみゅう」というニックネームで、かわいいアイドルを目論んだが、ほとんど定着しないまま、男前キャラの「若様」となり、メンバー内人気ナンバー1となる。番組の企画で、ロボットダンスを披露すれば、その未完成さが面白くいじられ、「ロボ君」になり、さらに他の企画で割りばし芸を披露したことで「箸君」が定着し、それをきっかけに「若様軍団」を結成したところ「軍団長」となる。

 これと並行して、ブログの文体から「ポエマー」と言われ、普段の行動……常識人でポンコツキャプテン桜井玲香をはじめ、トリッキーなメンバーへのツッコミ役から進行までそつなくこなすことから「真面目人間」とも言われ、本人ですら混乱することもあったが、とにかくどんな場所でも、若月さえいればなんとかしてくれるという安心感、安定感のあるメンバーとして、乃木坂を支え続けた功績ははかりしれない。

 ただ、記者の個人的な印象として、彼女ほど自分を殺して乃木坂全体のことをいつも考えていたメンバーはいなんじゃないかと……というと、綺麗だが、ようするに、最後までセルフィッシュに自分を主張することなく卒業していくメンバーもいないんじゃないかと、非常に残念に思うのだ。

 元々、若月というメンバーは「自分を見下してきた人を見返したい」という強い思いを抱いて乃木坂に入ってきたメンバーである。そのエネルギッシュで前向きで貪欲な姿勢は、結成したばかりの乃木坂の中ではひときわ目を惹き、一部では初代キャプテン候補として真っ先に名前があがっていたメンバーでもある。

 それでも彼女がアンダーからスタートすることになったのは、乃木坂最初のスキャンダル、いわゆる「プリクラ事件」がきっかけであった(と言われている)。

 デビュー前の話で、問題はないはずではあったが、例によって面白おかしく拡散され、攻撃材料にされ、謝罪に追い込まれたことで、彼女は、当初描いていたであろう形ではない状態でアイドル活動をスタートさせざるを得なくなった。

 それでも、もともと面倒見のよさや他人への気配りなど、女性としての美点の多かった彼女は、他のメンバーのフォローやキャプテン桜井の参謀格、後輩たちへの指導やメンタルケアなども、生真面目に、自分らしくこなし、同時に舞台で女優としてのスキルを、また趣味のデザインで二科展入賞などの才能を伸ばすことも忘れなかった。足の怪我でダンスが苦しくなっていたのと、元々歌はあまり得意ではなかったというマイナス面をおぎなってあまりある結果をだしつづけてきたのである。

 もはや過去のスキャンダルなど風化しているし、どうか、もっとセルフィッシュに自分を出して欲しい、それこそ「ジコチュー」で行ってほしい、十字架など外してしまえと思っていたところでの卒業発表に、記者はものすごく複雑な思いを抱いてしまっている。

 そう、これまで書いてきたように、場面場面では器用なのに、肝心なところで不器用なのが若月佑美の最大の長所であり短所でもあったのだ。

 十字架を外した若月が、今後どのような女優になっていくのか?楽しみに応援していきたいと思う。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

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