花王、海外市場の拡大と商品開発力強化により6期連続営業最高益更新に挑む

2018年5月13日 21:17

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 花王は5月10日、若手社会起業家の育成を支援する「花王社会起業塾」の2018年度の募集を開始した。

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 花王はESG経営を強化し「豊かな生活文化の実現」を目指して、社会課題をビジネスの手法で解決するため、2010年より子供の貧困と教育格差、ワーク・ライフ・バランス、障がい者の自立などのテーマで23組の社会起業家への支援を行ってきた。

 花王は1887年に長瀬富郎が「長瀬商店」を創業し、石鹸や輸入文房具を販売したのが始まりである。当初は品質のいい石鹸は海外からの輸入品であり、長瀬は試行錯誤を重ねて高級化粧石鹸「花王石鹸」を発売した。以前の石鹸は顔を洗った後肌がピリピリしていたが、安心して顔が洗えることから、「カオ(顔)石鹸」から「花王」という字をあてて、商品名とし、社名となった。

 昭和初期の洗髪料は「髪洗い粉」と呼ばれ、白土に粉せっけんや炭酸ソーダを混ぜたもので、これを長い髪に少しずつ付けて洗ったので時間がかかり、月2回ぐらいしか洗髪ができなかった。これを一気にラクにしたのが1932年に発売された石けんベースの「花王シャンプー」だった。

 化粧品、トイレタリーなど幅広く一般消費者向けの商品から産業界のニーズに対応するケミカル製品を製造販売し、6期連続営業最高益更新に挑む花王の動きを見ていこう。

■前期(2017年12月期)実績

 前期実績は、売上高1兆4,894億円(前年比102%)で、営業利益は前年より192億円増の2,048億円(同110%)であった。

 営業利益増加の要因としては、販売費・一般管理費増110億円、原材料価格上昇など98億円の減益要因に対し、細かな商品の売上数量増280億円、コスト削減120億円の増益要因によるものである。

■今期(2018年12月期)見通しと今後の推進戦略

 今期見通しは、売上高1兆5,400億円(同103%)で、営業利益は102億円増の2,150億円(同105%)を見込んでいる。

 特長ある企業イメージの醸成と利益ある成長を目指して次の事業戦略を推進する。

 1.Eコマースチャネルへの取り組み強化
 中国市場向け越境Eコマースの強化と日本でのEコマース拡大。

 2.アジア市場での売上、利益の拡大
 化粧品ブランドで集中マーケティング投資の実施。

 3.高級ヘアーサロン向けビジネスへの進出
 2017年12月米国のスーパープレミアムブランドを所有するオリベケア社を買収し、事業ポートフォリオを拡充、顧客基盤の拡大を図る。

 4.新しいメディアミックスの推進
 デジタル世代に向けたマーケティングチャレンジの拡大。

 5.日米欧3極体制の確立
 水性インクジェット用顔料インクの開発とグローバル展開。

 6.商品開発体制の強化
 基盤技術研究と製品開発研究とのマトリックス運営により、革新的な商品をスピードをもって提案。

 海外の巨大企業と国内市場でも競争が激化しており、2030年までにグローバルで存在感のある会社を目指し、海外戦略を強化、売上高2兆5,000億円(海外1兆円)以上に挑戦していく花王の動きから目が離せない。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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