三陽商会の黒転に一抹の不安

2018年2月27日 11:01

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 三陽商会は前2017年12月期の決算発表会で、18年12月期計画を「営業黒字浮上(5000万円)、最終損益の黒字転換(25億円)」とすることを明らかにした。周知の通り同社は15年に「表看板」だった「バーバリー」ライセンス事業の終了で、営業赤字に沈んだ。だがその後、日本の経営者がお得意の「構造改革」を進めた結果、18年12月期の「黒転」を公にするまでになったというのだ。「構造改革」とは「より好収益体質にするための施策」であり、営業拠点の縮小(人員削減)や商品アイテムの縮小とは本来一線を画する。が理屈はここでは蓋をする。

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 三陽商会は、バーバリー以外でも5つのブランドを廃止している。そしてなんといっても象徴的だったのは「不採算・低収益」を理由に289店舗を閉鎖した。ブランド減/商品減に加え大々的な販売店の閉鎖で「在庫コントロール」が容易になり、物流(委託)費や広告宣伝費が減少し赤字が減るのは当然。あくまでも「構造改革で」とするのなら、予測が可能だったバーバリーのライセンス事業終了前に手掛けておくべきだったと言っても誹りは受けないと考える。

 しかしとにもかくにも前期の営業損益が「19億円の赤字(16年2月期84億円の赤字)」、最終損益が「10億円の赤字(同113億円の赤字)」まで改善したことはご同慶の至りではある。

 アナリストは「三陽商会としては大幅な店舗縮小=コスト削減状態となったいま、ネット通販の拡充で黒字額を上積みしていく方針」と解説するが、一口にECといっても諸々ノウハウもあり容易ではない。とくとお手並み拝見としておく。ただ余りに軽々に過ぎると感じるのは、次の様な方向性の発表である。「18年後半に1年以上の勤務を条件に、店舗スタッフ(販売員、デザイナーなど)の契約社員約1000人を正社員にする」。理由は人手不足の深刻化の中で優秀な人材を確保するためというが、現状下でのこの発言には説得力を感じない。

 18年度以降の収益動向とそれを現実にする背景を明確にした上で、行うべき発言だと考えるのは私だけではないと思うが如何か。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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