東京工業大、5Gを見据えた世界最高速度毎秒120ギガビットの無線伝送に成功

2018年2月19日 20:16

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120Gbpsの無線通信を実現したCMOS無線送受信チップ。 (画像:東京工業大学発表資料より)

120Gbpsの無線通信を実現したCMOS無線送受信チップ。 (画像:東京工業大学発表資料より)[写真拡大]

 東京工業大学と富士通研究所の共同開発による広帯域ミリ波無線送受信機が、世界最高速度を更新する毎秒120ギガビットの無線伝送に成功した。

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 とても単純な話をすると無線より有線の方が高通信速度を実現することは容易である。理由は説明するまでもないであろうが有線であれば東京とアメリカのソルトレイクシティ間を140Gbps(ギガビッド毎秒)で結ぶ、というのが2016年に実験的に成功している。短距離ならばもっと天文学的な伝送速度がやはり実験的には成功している。

 ただし無線の有線(光ファイバーなど)に対する圧倒的な優位性は、取り回しの良さにある。建物の密集する場所、逆に山間など自然物が狭隘である場所などなど、光ファイバーの敷設が困難な場所は多くある。しかし、5Gの普及は既に目前に迫っており、低コストでの光速度無線通信への期待は増している。

 今回開発された無線送受信チップは、CMOS(シーモス:Complementary MOS)と呼ばれるもので、70から105ギガヘルツ(GHz)と広い周波数範囲で、高速に信号を処理することができる。そもそも、大容量データの無線送受信のためには、なるべく広い周波数範囲を使うのが望ましく、ミリ波帯(30~300GHz)が理想的である。しかし、周波数の高いこの帯域はCMOS集積回路の動作限界のぎりぎりに近いため、これまで設計は困難であった。

 今回開発されたものは、データ信号を二つに分けて異なる周波数帯に変換してから混合することで送受信の広帯域化を行うチップである。東工大は送受信回路の広帯域化技術を開発、富士通研はモジュール化技術を応用した。

 また、大きなメリットとして、今回開発された伝送システムはシリコンを用いたものであり、コストは安い。今後、スマートフォンの基地局などをターゲットとして、2020年頃をめどに実用化を目指すという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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