居酒屋チェーン1月売上、焼き鳥メインチェーンでも明暗が別れる

2018年2月15日 18:19

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 大手居酒屋チェーンの1月次売上発表から、店舗展開やブランド、業態などによって売上の推移に差が出ており、焼き鳥をメインとした居酒屋チェーンでも「鳥貴族」が好調な一方、「塚田農場」や「備長扇屋」では厳しい状況が続いていることが分かった。

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■「庄や」は店舗改装の進捗に注目

 先日、鳥貴族、ワタミなどの1月次売上を紹介したが、連休が明けた13日に他の居酒屋チェーンも1月次売上を発表している。目についたものを紹介しよう。

 庄やが発表した月次売上状況によると、既存店の前年同月比は売上高が96.5%、客数が96.3%、客単価が100.3%、全店では売上高が91.6%、客数が91.7%、客単価が99.9%だった。既存店の客単価は昨年10月から4カ月連続で前年比プラスとなっているものの、客数が伸びないことで、既存店売上高は2017年4月から連続で10カ月連続でマイナスとなった。さらに全店売上高の前年比では、2015年10月(101.2%)を最後に、2年以上も前年比マイナスが続いている。

 1月時点の店舗数は「庄や」が170店、「日本海庄や」が84店など計508店。前期(2016年9月~17年8月)は新規出店14店に対して、閉店40店、改装67店。今期(2017年9月~18年8月)は5カ月間で新規出店7店に対して、閉店14店、改装24店となっている。こうした店舗展開の進捗が業績にどうつながるか注視していきたい。

■「塚田農場」は厳しい状況が続く

 エー・ピーカンパニーが発表した月次営業レポートによると、既存店の前年同月比は売上高が90.5%、客数が91.0%、客単価が99.1%、全店では売上高が92.4%、客数が92.8%、客単価が99.2%だった。既存店実績は厳しく、2017年2月以降、1年間も客数、客単価ともに前年比マイナスが続いている。また2016年頃から新規出店のペースが鈍ったことで、全店売上高は昨年7月から7カ月連続でマイナスとなった。

 1月時点の店舗数は国内198店(他に海外17店)。国内店舗の7割以上が地鶏をメインとした「塚田農場」などで、魚専門の「四十八漁場」、ホルモンの「内臓専門 (卸)芝浦食肉」などは2割程度に留まっている。この辺りにワタミなどのような店舗転換の難しさがある。一方で「鳥貴族」のように、好調な焼き鳥メインの居酒屋チェーンもあり、単一チェーンが一概に悪いとは言いきれない。

■同じ焼き鳥でも明暗が同居するヴィア

 ヴィア・ホールディングスが発表した月次速報によると、既存店の前年同月比は売上高が93.8%、客数が95.6%、客単価が98.2%、全店では売上高が92.9%、客数が94.1%、客単価が98.7%だった。既存店、全店の厳しさは言う間でもないが、同社はブランド別の月次売上を発表しているので、そちらに注目しよう。

 落ち込みの少ないブランドでは、「紅とん」が97.8%、「オープン亭」など洋食系のファミリーレストランが98.8%、「オリーブの実」など中華系のファミリーレストランが97.7%。特に「紅とん」は1月こそ前年比マイナスだったが、累計では100.7%と同社ブランド内で唯一前年比プラスとなっている。反対に厳しいのは、同社の中核となる「備長扇屋」(昨年末時点で543店中の約341店)などが91.8%、イタリアンの「パステル」などが93.4%、刺身居酒屋の「魚や一丁」が94.8%だ。

 興味深いのは「備長扇屋」も「紅とん」も焼き鳥を中心メニューとしている点。同社サイトによると、前者は「元気・笑顔・活気そして一本いっぽん真心をこめて焼き上げるおいしい“やきとり”」が、後者は「働くお父さんのエネルギー源」がコンセプトだそうだ。

■慎重な「天狗」の出店戦略

 「天狗」などを運営するテンアライドの月次売上速報によると、既存店の前年同月比は売上高が98.9%、客数が95.4%、客単価が103.7%、全店では売上高が97.1%、客数が93.1%、客単価が104.3%だった。既存店、全店ともに昨年6月から客単価の前年比プラスが続いており、客数に増減があるものの、堅調な推移となっている。

 同社で興味深いのは、既存店売上(98.9%)>全店売上(97.1%)となっているところ。今期(2017年4月~18年1月)の累計でも既存店売上が101.8%、全店が99.3%だ。

 これは同社の店舗数が横ばいとなっているためで、直営店は今期初めとなる4月時の118店から120店に増えているものの、昨年1月時点の122店からは減っている。同日に発表した決算資料にも「前期の店舗閉鎖に伴い売上高は減少したものの、既存店の売上高は増加」とある。ワタミや庄やとは異なる経営方針がありそうだが、この後、新規出店を増やす時期の見極めが課題となりそうだ。

■景気回復に乗ることができるか

 この他では、「八剣伝」などのマルシェグループは、既存店で売上高が98.7%、客数が97.7%、客単価が100.9%、全店で101.5%、客数が99.7%、客単価が101.8%。「ニパチ」などのヨシックスは、既存店で売上高が101.0%、全店で127.1%(客数、客単価は未発表)だった。

 忘年会の需要を受けてか、昨年12月に月次売上を回復したものの、その反動で1月の落ち込みにつながったチェーンが多い。外食産業では、ファーストフードやファミリーレストランなどが売り上げを回復する中で、居酒屋形態もそれに続けるかに注目したい。(記事:県田勢・記事一覧を見る

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