大気中の膨大なウィルスの量についての研究 長距離移動の実態が判明

2018年2月15日 17:19

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●大気中のウィルスの量に関しては初めての研究

 煙霧粒子によって上空に運ばれふたたび空から地面に落ちてくるウィルスの数は、1平方メートルあたり数百万に上る、という研究結果が発表された。とくに、海面から上空に運ばれて下降するウィルスの量が著しいことも判明した。今回の発表は、ウィルスの長距離移動の研究としては初となる。

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●雨とともに降ってくる8億個のウィルス

 研究結果は、科学雑誌「International Society for Microbial Ecology Journal」に掲載されている。

 記事によれば、雨となって降り注ぐウィルスの数は毎日8億個にもおよぶ。ただし、この数字はあくまで平均値であり、さまざまな条件により数字は変動する。

 長年にわたり、研究者たちは風によって運ばれた塵や粒子がどれほどの距離を移動し、内包するバクテリアがどのように分散するのかを研究してきた。しかし、ウィルスに関してはこれまで調査研究が進んでいなかったのである。今回の研究結果では、異なる環境から遺伝的に類似したウィルスが大量に発見されたことが注目されている。

●標高2500メートルの山で行われた実験

 グラナダ大学のIsabel Reche教授が率いる研究チームは、イベリア半島南東部、シエラネバタ山脈にある標高2500メートルから300メートルの山にサンプルを設置した。この標高であれば、サンプルは微粒粒子とともに数千キロメートルまで上昇できるためである。

 その後、散布したサンプルを分析したところ、ウィルスの空気中への分散量は気象条件にもよるが毎日2億6千万から7億という結果が出た。この数字は、バクテリアの分布量の9倍から461倍にあたる。

●バクテリアは地表から、ウィルスは海面から

 また、バクテリアの大部分は地表から砂や煙霧粒子に付着して大気中を上昇するが、ウィルスは海から生じていることも報告された。

 過去の研究では、海面から100メートル以内の大気中には1ミリリットルあたり約1000万のウィルスが存在するのに対し、海岸では1立方センチメートルあたり1億~10億のウィルスの存在が認められたという。

●ウィルスがバクテリアよりも広範囲に移動できる条件

 ウィルスがこれほど広範囲に移動するのはなぜか。

 研究では、ウィルスは7マイクロメートルという非常に小さな粒子状物質に付着する性質があることが判明した。つまり、ウィルスはバクテリアと比較するとより長時間、より高度の上空に上昇できるのである。

 さらに、バクテリアは雨によって容易に地面に到達するが、ウィルスはこの条件にも当てはまらない。つまり、大気中により長く残留する結果となる。

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