オランウータンは劣位のオスでも子孫を残せる、京大などの研究

2018年2月7日 07:52

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(左)フランジ雄。体重90キロを越える。(右)アンフランジ雄。雌に似た外見で体重は40キロ前後しかない。(画像:京都大学発表資料より)

(左)フランジ雄。体重90キロを越える。(右)アンフランジ雄。雌に似た外見で体重は40キロ前後しかない。(画像:京都大学発表資料より)[写真拡大]

 京都大学などの研究グループは、アンフランジと呼ばれる劣位の個体であっても、オランウータンは子孫を残せると言う研究結果を発表した。

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 オランウータンは謎の多い生物である。人にもっとも近い類人猿の一種で、本来的には盛んに研究対象となるべき種であるはずだ。だが、研究が難しい。理由は主に三つある。まず、かれらは群れを作らない。類人猿においてはかなり珍しい生態である。

 第二に、絶滅が危惧されるほど生息数が少ない。詳述の余裕はないが、主に森林破壊などを原因として、生息環境を奪われている生物種である。

 第三に、かれらは極めて少子である。7年に1回しか子供を産まないのである。その上、前述のように群れもないから、どの個体とどの個体が親子関係にあるのかなどを把握することが難しいのだ。

 オランウータンにも、群れはなさないが雄の序列というものはある。それは外見上の特徴に現れる。優位の個体はフランジと呼ばれる顔のひだを持ち、劣位の個体はひだを持たないためにアンフランジと称されるのである。

 今回の研究では、このアンフランジが子孫を残してるかどうか、糞のDNAを鑑定することによって調べられた。結果として、数的には少ないものの一部のアンフランジが子をなしていること、またそれが初産の子に限られている、ということが明らかになったのである。以上のような事実が明らかにされたのは、スマトラオランウータンではわずかに報告例があったものの、ボルネオオランウータンにおいては研究史上初めてのことであるという。

 なお、本研究の詳細は、Reproductive success of two male morphs in a free-ranging population of Bornean orangutansと題され、PRIMATES(Springer)に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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