横綱・鶴竜 苦しみながら初場所を支えた15日間

2018年1月30日 19:53

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 大相撲初場所は平幕・栃ノ心の初優勝で幕を閉じた。横綱として唯一、千秋楽まで土俵を務めた鶴竜は途中まで優勝争いの先頭に立っていたものの、4連敗を喫するなど、終盤は苦しい相撲が続いた。

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■休場明けの不安の中の連勝

 不安視された初日の相撲では北勝富士に対し、勢いよく頭で当たった後、突き押しで圧倒し、最後は引き落としで3場所振りとなる本場所の土俵を危なげない内容で終えた。

 2日目以降も勝ち星を重ね、7日目には栃ノ心との全勝対決も制し、優勝力士に唯一の黒星をつけている。栃ノ心のかち上げを正面から受け止め、潜り込んで両まわしを掴んでの一気の寄り。巨体をものともしない横綱相撲だった。

 10日目の隠岐の海戦も右上手を掴むと素早く回り込み出し投げで送り出し、わずか数秒で仕留める。鮮やかな10連勝に館内は大歓声、そして強い横綱という存在への安堵感からの拍手に包まれた。

■満身創痍の15日間

 しかし「盤石」は突然、崩れる。

 11日目、玉鷲戦で引き際を押し出されると翌日も遠藤に同じ形で連敗、13日目は御嶽海の突きになすすべなく敗れ、14日目、大関・高安にも屈し4連敗。敗れた後、土俵下で大きくゆがむ表情もみせ、優勝争いからも転げ落ちた。

 場所を通して、立ち合いでは重心を低く相手に当たり先手を取り続けていたものの、一旦守勢に回ると「我慢できずに」(鶴竜談)引いてしまう悪い癖が要所で顔を出してしまった。

 千秋楽には結びで豪栄道を下しかろうじて連敗を止めたものの、相手の勢いに押される形での小手投げと、力強さは最後まで戻ることはなかった。

 相撲内容では好・不調の差が明らかになったが、不祥事続きの異様な状況で行われた初場所、序盤から一人横綱として場所を盛り上げたという点においては役割は十分に果たしたと言える。終盤戦の失速も、連続の休場明けの影響は明らかで、進退問題も囁かれた中では責めることは出来ない。

 怪我も癒えず、満身創痍であるはずだが、多くの力士からみられたような大袈裟なテーピングで覆うこともせず、15日間、相撲を取り続けた。今場所の鶴竜に対して、ファンの期待に応え、さらに「綱の重み」にも耐え抜いたと言っても許されるのではないだろうか。(記事:佐藤文孝・記事一覧を見る

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