電鉄企業のサバイバル作戦 生き残りへあの手この手

2017年12月9日 18:49

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小田急電鉄が2016年12月に神奈川県内で初めて開設したサービス付き高齢者向け住宅「レオーダ新百合ヶ丘」(川崎市)のイメージ。(画像: 小田急電鉄の発表資料より)

小田急電鉄が2016年12月に神奈川県内で初めて開設したサービス付き高齢者向け住宅「レオーダ新百合ヶ丘」(川崎市)のイメージ。(画像: 小田急電鉄の発表資料より)[写真拡大]

 電鉄会社にとり車内の「中吊り広告」「枠組み広告」が貴重な収入源であることは断るまでもない。最近では車体に人気アニメが色あでやかに描かれ、電車自体が走る広告塔となっているケースも珍しくない。

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 だが電鉄企業にとり最大の収入源は、電車使用料金(運賃)。しかしいま「少子化」が進捗し、使用者の漸減傾向が進み始めている。沿線の住人も同様に減少トレンドに入っている。鉄道各社にとって沿線住民をいかに確保するかは、遠からず「死活問題」になりかねない。各社、色々と知恵を絞った策と取り組んでいる。

 象徴的な2例を紹介する。

 小田急電鉄(東京)では、地域に増加する「高齢者対応」に力を注いでいる。「地域に住まわれる高齢者の方に適した“住み替え先”を沿線に用意する」としている。そして現に2014年11月の「サ高住」(社宅跡地を活用)を皮切りに、東京都世田谷区に「サ高住」「介護付き有料老人ホーム」を展開。更には神奈川県川崎市・藤沢市にもサ高住を開設といった具合に「住み替え先」の用意に力を入れている。川崎市の65歳以上の高齢化率は12年の17・45%から「25年には22・46%」へと試算されている。藤沢市、然り。21・5%が26・6%に至るとされている。「住み替え先」にとどまらず、「デイサービス」施設や「訪問介護拠点」の整備が進んでいる。

 周知のように「空き家」問題への対応が喫緊の課題となっているが、京浜急行電鉄などでは「空き家」問題と沿線住民確保の「二兎を追う」施策を見せている。金沢文庫駅(横浜市金沢区)から徒歩7分の築古(築40年)「空きアパート」を大幅にリニューアルし、内外の学生用シェアハウスに模様替えした。

 先の小田急電鉄でも、同様の施策に着手している。昨年10月「空き家」「空き室」に悩むオーナーから建屋(築20-30年)を借り入れ改良した上で、20-30歳代をメドに転貸する事業を始めている。

 電鉄各社は勝ち残り・生き残りを賭け、沿線住民の確保と対峙している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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