日本で金塊密輸が横行するその理由とは?

2017年7月11日 07:53

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金の延べ棒。

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 海外から日本に、金塊を密輸入する事件が相次いでいる。なぜ、禁制品でもない金を、リスクを冒してまで密輸するのか? それは、消費税の仕組みを利用した荒稼ぎが可能であるためだ。

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 日本の制度では、正規に金塊を持ち込む場合、税関に申告し、消費税を納める決まりになっている。消費税のかからない国や地域で金を購入し、日本に密輸して消費税込の金額で売却すれば、売買額の差を無視すれば、まるまる消費税8%分が手元に転がり込むという寸法だ。

 9日には、関西国際空港に向かっていたLCC「バニラ・エア」の機内のトイレ2か所で、密輸グループが日本に持ち込もうとしていたと見られる数十キロの金塊が発見された。

 4月には、100キロ超、5億円以上の価値のある金塊を密輸しようとしたマレーシア人10人が大阪税関が摘発された。

 6月には、韓国から成田空港経由で金塊33キロを密輸しようとした男女10人が逮捕された。

 また、強盗事件の被害者が実は金塊密輸グループであったことが発覚して逮捕された、という事件も4月に大阪で発生した。

 この種の犯罪が激増したのは、消費税が5%から8%に引き上げられた2014年以降のことである。同様の手口は存在しなかったわけではないのだが、税関によれば、2013年7月~2014年6月には全国で8件だった摘発数が、2014~2015年には177件、さらに2015~2016年には294件に上っているという。

 2015~2016年の密輸事件の被害総額は約6億円で、過去最高額を更新している。なお、被害に遭っている対象は何かと言うと、日本人の血税である。実質的に、日本に納められた税金が、不正な手段で盗み出されているのに等しい犯罪だというわけだ。

 現状、対策は後手に回っており、捜査当局からは、何らかの規制強化を求める声が上がっている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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