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スイス、2050年までに脱原発を目指す国民投票を可決
masakun曰く、 スイスで2050年までに脱原発を実現する新エネルギー法の是非をめぐる国民投票が実施され、投票者の賛成過半数(58.2%)を得て可決された(SWISS Info、日経新聞、ロイター)。
化石資源に恵まれない内陸国であるスイスでは現在、水力発電が6割、5基ある原子力発電が3割を占めている。ただし実際はスイスの水力発電の半分弱がダムをもたない流水式水力発電であり、凍結などで水量が減る冬季は発電量が減少、電力需給がひっ迫するため、フランスの原発2基(2000MW)の使用権限を有することで電気を輸入して冬の不足分を賄い、夏はイタリアに余剰電力を融通している。そのためフランスからの融通を含めると、水力と原子力発電がスイス国内の電力を賄っているといえる(JETROレポート)。
2011年の福島第一原発事故を契機にスイス連邦政府は「エネルギー戦略2050」を策定、そのための法案整備を進めてきた。スイス国内の原子炉を45年の運転期間で閉鎖するという脱原子力を促進する緑の党の提案では最後のライプシュタットが2029年に廃炉となってしまうため、2016年11月に実施された国民投票では「54.2%が急速な段階的廃止に反対と投票し、賛成票は45.8%に止まった」経緯がある(電気事業連合会【スイス】国民投票で緑の党の脱原子力促進発議を否決)。
今回可決された新エネルギー法では2035年までに多様な再生エネルギー源を組み合わせる「エネルギーミックス」を実現し、特に太陽光と風力エネルギーの発電量を4倍にすることを目指している。また2035年までにひとりあたりの年間エネルギー使用量を2000年比で35%減らす省エネとエネルギーの効率的使用の促進を目指していくことで、2050年までに「水力以外の再生可能エネルギー(約30.6%)を拡大」し脱原発を達成するという。
今回の法案で議論となったのは消費者の負担額で、反対派は4人家族で年間3600フランの値上がりになるという試算を発表、冷たいシャワーを浴びる女性のポスターを掲示して訴えた。一方賛成派は「電気料金は1キロワット時につき1.5サンチームから2.3サンチームになり、 4人家族では年間40フランの値上がりになると試算」し、反対派の主張を「全くの誤算だ」と批判していた。新エネルギー法は2018年1月に施行されるが、施行されたとしてもスイスの原発(PWR 3基、BWR 2基)がただちに全廃になるわけではないのでご注意を。
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