ムッシュかまやつさんが78歳で死去、日本の60年代を代表するGSの一人

2017年3月2日 09:06

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 日本の60〜70年代の若者音楽をリードした、グループ・サウンズ(GS)を代表する「ザ・スパイダース」のメンバー、ムッシュかまやつ(釜萢弘)さんが、1日午後6時に都内の病院で亡くなっていたことがわかった。78歳だった。

■コミカルな要素と音楽、洋風と和風を取り入れた人気バンド


 ムッシュさんは、『あの時君は若かった』『フリフリ』など、昭和のグループ・サウンズを牽引してきた「ザ・スパイダース」にギタリスト兼ボーカルとして参加。

 同グループには、堺正章・井上順など、後の芸能界をリードする多彩なメンバーが在籍していた。ムッシュさんはパフォーマーとして活躍だけでなく、作詞・作曲も手がけている。

 また、グループ解散後の70年代には、かまやつひろしの名義で「ムッシュー / かまやつひろしの世界」をリリース。ボーカル、ギターをはじめとしてドラムなどすべての楽器を担当するマルチな才能を見せた。

 60年代以降、日本の若者向け音楽に大きな影響を与えたグループ・サウンズには、「ブルー・コメッツ」や「ザ・タイガース」などのバンドがあり、中でも「ザ・スパイダース」は、ライブ中のトークでコミカルな演出を得意としてきた。

 グループ・サウンズが流行した当時は、ビートルズが日本公演(1966年)を行い、同年にローリング・ストーンズがヒット作「黒くぬれ!(Paint It, Black)」をリリースするなど、欧米で生まれた最先端の音楽が日本へ積極的に取り入れられた時代でもある。

 ムッシュさんも、当時のロックを取り入れるだけでなく、ソロ楽曲の「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」では、ファンクな要素を組み込んだ音楽性と、自由な日本語の歌詞から、後に高い評価を受けている。

■映画・ドラマなど、幅広いエンターテイナーとして活躍


 ソロ活動以降は、女性アイドルからハードロックバンドまで、多彩なアーティストに楽曲を提供したムッシュさんは、自らも映画やテレビドラマなどに出演し、独特の存在感を見せてきた。

 また、東西冷戦の象徴としてドイツを分けていたベルリンの壁が崩壊する直前には、「ザ・スパイダース」時代の『バン・バン・バン(作詞・作曲:かまやつひろし)』をギターで弾き語りしたことでも話題となった。

 デビュー当時は学生運動が盛んになろうとしている時期、また後年にいたっても昭和から平成へと時代が移り変わる中で、「社会の動きと音楽」「日常生活と政治」を切り分けずにバランス良く表現してきたエンターテイナーと言えるだろう。(記事:桐生忠彦・記事一覧を見る

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