国内最大規模のバイオマス事業が採用、新技術「乾式メタン発酵」に期待感

2017年2月11日 11:45

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KURITA DRANCO PROCESS発酵槽構造。(画像:栗田工業発表資料より)

KURITA DRANCO PROCESS発酵槽構造。(画像:栗田工業発表資料より)[写真拡大]

 かねてより「バイオマスエネルギー」に関する事業について公募していた国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、これに栗田工業の「乾式メタン発酵技術(KURITA DRANCO PROCESS)」を採用し、助成事業とすることを決定した。

 バイオマスエネルギーの乾式での利用は、最近、再生可能エネルギーの中でも注目を集めている研究分野である。

 そもそもバイオマスエネルギーとは、化石燃料を除いたありとあらゆる有機物から取り出され、利用されるエネルギーの総称である。理論的には、すべての有機物はエネルギーを持つ。遡れば、そのエネルギーの源は太陽光である。ここで植物の光合成から始まる生態系サイクルについて解説することはしないが、とにかく、コンビニの廃棄弁当だろうが、バナナの皮だろうが、有機物であるからには太陽由来のエネルギーを内包している。

 バイオマスエネルギーには、夢がある。たとえば、毎日家庭で出る生ゴミを燃料庫に放り込むだけで、スタンドでの給油をせずともマイカーを走らせることができたら、それは何と素晴らしいことだろうか。

 しかし残念ながら、これはまだ(控えめに言っても)SF的な幻想に過ぎない。技術的課題は多岐に及ぶのだが、一つには、生ゴミには水分が多すぎる、というのが重要な問題である。水は有機物ではない。従ってバイオマスではない。故に、バイオマスのエネルギー利用に際しては、水分をどう処理するかが大きな問題となる。

 現実にはどうしているかというと、処理するのが大変なので、そもそも最初から、「ウェットなバイオマス」の利用はあまり進んでいない。環境エネルギー政策研究所のデータによれば世界の発電に占めるバイオマスエネルギーの割合は1.8%ほどだが、そのうちの7割から8割が、木材などの水分の少ない固体を利用したバイオマスであるという。

 さて、では栗田工業の乾式メタン発酵の話に移ろう。この技術では、ドライでないバイオマスも利用可能である。生ゴミ、動植物残さ、有機汚泥、産業廃棄物などの多様な廃棄物から、発酵に適したものを選り分ける。そこからバイオガスを回収し、燃料や電力などに変換する。一日の処理可能廃棄物は約76トンだ。

 そしてさらに優れたことには、このシステムによって生じる残さ物は水分が少ないため、下水などを利用した水分の処理が不要である。

 事業開始の目標は2018年度で、今後、施設の建設や試運転が行われる。建設される施設は約3,000立方メートル、バイオマス施設としては国内最大規模のものになるという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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