うつ病や希死念慮に関連する血中物質を同定、科学的診断法への道開く

2016年12月20日 11:56

印刷

うつ病の各症状と、それに関連する血中代謝物の関係を表した図。赤字は正相関、青字は負相関。(図:九州大学発表資料より)

うつ病の各症状と、それに関連する血中代謝物の関係を表した図。赤字は正相関、青字は負相関。(図:九州大学発表資料より)[写真拡大]

 九州大学、大阪大学、国立精神・神経医療研究センターを中心とする共同研究グループが、「重い抑うつや希死念慮を持つ人の血液中に多く含まれる血中代謝物」を突き止めることに成功した。これにより、将来的には、血液検査を行っただけで「うつ病」や「自殺の危険性」などを診断することが可能になると期待できる。

 そもそも現状、抑うつや希死念慮などのうつ病等に関連する症状は、どのように診断されているのだろうか?簡単に説明すると、「患者自身に、アンケートのようなものに答えさせ、その結果を見る」か、「患者自身に直接『憂うつですか』『死にたいと思いますか』と聞く」という、遺憾ながら(現代医療における他の診療科目と比較した場合)粗放的と言うしかない手法が21世紀の今日なお主流である。

 アメリカのDSMシリーズ、WHOのICDシリーズなどの「精神医学の診断マニュアル」によって精神科診断学は一定の洗練を見てはいるのだが、そうはいっても、尿と血液を分析しただけでそのデータから糖尿病を診断する、といったような具合にはいかない。いや、いかなかったのである。それが、この研究を端緒に、今後は変わっていくかもしれない。

 これからは、心療内科や精神病院ではまず採血をし、それだけで「あなたは重いうつ病です」「自殺したいという気持ちが強いようですね」などと対応してもらえるようになるのかもしれない。

 今回、研究グループは、抑うつ症状の重い患者の血液を最新式の手法で化学的に分析、各患者の症状と照らし合わせ、各症状ごとの「それに対応する血中物質」を同定した。例えばアラニンの上昇とキヌレニンの低下は希死念慮に関わり、Nアセチルグルタミン酸の低下は抑うつ気分に関連しているという。

 研究のさらなる詳細は、オープンアクセスの国際科学雑誌「PLOS ONE」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

関連記事