佐賀県の悲願実らず 「無毒」トラフグ肝食用解禁、四度目の却下

2016年12月8日 17:00

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トラフグの刺身。(写真:t-mizo/flickr)

トラフグの刺身。(写真:t-mizo/flickr)[写真拡大]

 内閣府食品安全委員会の専門調査会は7日、佐賀県と同県の水産業者から請願されていた、独自技術で育てた「無毒トラフグ」の肝臓の食用化について、「安全性を保証できない」として却下する方針をまとめた。同種の提案は2004年以来4回に渡って提出されており、今回が4度目の却下となる。

 トラフグを含むフグの仲間は、その身の一部に猛毒のテトロドトキシンを含む。テトロドトキシンは猛毒で、古来よく知られているように、フグに当たれば死に至ることもある。2015年のフグによる国内の中毒患者は46名、死者が1名であった。

 ただ、フグは生まれながらに毒を持った生き物ではない、らしい。フグの毒は餌の中に含まれるものであり、それが体内で濃縮され、テトロドトキシンとなる。そのため、毒素を一切含まない餌だけで育てれば毒のないフグが育つ―と、一部で言われている。あくまでも仮説であり、保証の限りではない。

 しかし、佐賀県の水産業者はこの仮説に注目し、これに基づいた独自の養殖技術を確立すべく、長年に渡り努力を続けている。研究と開発の結果、全く毒を含まないトラフグの養殖を実用化するに至った、と主張しているのだが……政府機関からのOKサインは、残念ながら今回も出なかったのである。

 なお、直接関係はないのだが、実は毒性があるはずのフグの内臓を合法的かつ安全に食べる手段は存在する。肝臓ではなく卵巣であるのだが、石川県の郷土名産品で、河豚の子糠漬けと呼ばれるものがそれだ。ゴマフグの卵巣を2年から3年ほど糠に漬けておくと、卵巣に含まれていたテトロドトキシンはほとんど失われ(ゼロにはならないが、無害なレベルにはなる)、食用に耐えるようになるのだ。なぜ糠漬けでテトロドトキシンが抜けるのかは分かっていない。分かっていないが、現に抜けているということで食用販売の許可は出ている。

 食べたことのある人の話によると、珍味ではあるが尋常でない塩辛さで、テトロドトキシンより先に塩分の過剰摂取で死ぬのではないかという気がしてくるらしい。

 さて、佐賀県の無毒トラフグが石川県の珍味と異なるのは、(本当に安全なのなら)「刺身でもいける」という点だ。苦労は絶えないだろうが、ぜひこれでめげずにさらなる研究を重ね、5度目の挑戦に向かって頂きたいものである。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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