人工知能を耐災害情報に活用、エリアの被災状況概要を一目で確認

2016年10月23日 20:45

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記事提供元:エコノミックニュース

近年、人工知能の各分野での応用、展開が目覚しい。産業分野、金融分野、小売分野などビジネス面での利用が進んでいる。しかし、そればかりではない。今回、国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)が、耐災害用として活用を始めた。

 NICT は、耐災害ICT研究センター及びユニバーサルコミュニケーション研究所において開発している災害状況要約システム「D-SUMM(ディーサム)」(Disaster-information SUMMarizer)をからWeb上に試験公開した。D-SUMMは、人工知能を用いて、Twitterに投稿された災害関連情報をリアルタイムに分析し、都道府県単位又は市区町村単位でエリアを指定すると、指定エリア内の被災報告を瞬時に要約し、そのエリアの被災状況の概要が一目でわかるように、コンパクトかつ、わかりやすく提示し、各種救援、避難等を支援するという。パソコンのWebブラウザまたはタブレット端末からhttp://disaana.jp/d-summ/にて利用できる。

 同機構は、既に、対災害SNS情報分析システムDISAANA(ディサーナ)のリアルタイム版を2015年4月8日から試験公開し、2016年の熊本地震をはじめとする災害において、Twitter上の災害関連情報へ素早くアクセスできる手段として展開している。しかし、DISAANAでは、大規模災害の発生時に膨大な被災報告が出力され、被災状況の概要を一目で把握することは困難だった。そこで、この課題を解決すべく、災害状況要約システムの研究開発を進めてきた。

 D-SUMMは、Twitter上の膨大な災害関連報告をわかりやすく整理し、要約するシステム。NICTが既に公開しているDISAANAでは、「火災が発生している」「火事が起きている」など、意味的に類似する被災報告が別々に出力されていました。D-SUMMでは、これらの報告を一まとめにすることで、よりコンパクトに被災報告を要約して提示する。

 また、被災報告をそのタイプ(地震、道路やインフラの被害、物資の不足等)毎に分類して、必要とする情報へのアクセスを容易にする。さらに、指定エリアの下位のエリア(指定エリアが県の場合は、県下の市町村)単位毎に被災報告を整理し、重大な被災報告が多く挙がっているエリアから順に表示することで、どのエリアの被害が大きいかをわかりやすく提示するという。

 これらの機能を実現するために、DISAANAで被災報告のタイプを分類するために使用していた意味カテゴリー辞書(2,800万語)を機械学習、統計処理を用いて細分化し、より細かい意味カテゴリーを設けた。こうした工夫によって、地図上での表示も含めて、より直感的で分かりやすい被災状況の提示が可能になり、効率的な救援、避難の支援が可能になると期待される。また、大規模災害時におけるD-SUMMを試せるように、熊本地震の際のツイートを対象とした「熊本地震試用版」のD-SUMM及びDISAANAを公開した。

 今後は、DISAANA同様、実際に救援活動等を行う組織と協力して、実証実験等を行い、さらなる機能追加や使い勝手の向上を図る方針だ。このような活用には大歓迎である。我が国は地震、台風など災害が多い国。心強い限りである。(編集担当:慶尾六郎)

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