スペースX社、「改良型ファルコン9」ロケット用の第1段エンジンを公開

2015年9月25日 17:00

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記事提供元:sorae.jp

スペースX社、「改良型ファルコン9」ロケット用の第1段エンジンを公開(Image Credit: SpaceX)

スペースX社、「改良型ファルコン9」ロケット用の第1段エンジンを公開(Image Credit: SpaceX)[写真拡大]

 米国のスペースX社は2015年8月18日、「改良型ファルコン9」ロケットに装着される、新しい「マーリン1D」エンジンを公開した。

 この新しいエンジンは、従来型と比べて見た目に変化はあまりないが、推力が15%向上している。なお、写真のエンジンは黒くなっているが、これは熱試験のためにコーティングされているためで、実際の打ち上げでは使われない。

 このエンジンを装備するファルコン9ロケットは、「改良型ファルコン9」(Upgraded Falcon 9)、もしくは「ファルコン9 v1.2」と呼ばれている。

 改良型ファルコン9では、第1段エンジンだけでなく、第2段エンジンの推力も向上。また第1段機体や第1段と第2段をつなぐ段間部の構造も改良されるほか、第2段の全長が伸び、推進剤の搭載量も増える。

 これにより、打ち上げ能力は従来から約30%も増えるという。これまでのファルコン9は地球低軌道に最大13.2トン、静止トランスファー軌道に最大4.85トンの打ち上げ能力をもっていたが、これが地球低軌道には約17トンに、静止トランスファー軌道に6.3トンにまで向上する。

 この能力向上により、より重い衛星の打ち上げが可能になるだけではなく、ロケットを再使用できる頻度も上がる。

 ファルコン9はこれまでに、打ち上げ後の第1段機体を、海上や、無人の船の上に降ろすという試験を繰り返し行っている。これにはロケットの機体を回収し、再使用することで、打ち上げコストを大幅に減らしたいという狙いがある。試験はこれまでに7回(海上へ5回、船の上へ2回)行われているが、まだ回収まで成功したことはない。

 しかし、この試験ができるのは打ち上げ能力に余裕があるときだけで、たとえば静止衛星などの打ち上げではロケットの能力を最大限使わなければならないため、着地に使うための着陸脚や、追加の推進剤を積む余裕がなかった。しかし、この改良型ファルコン9を使えば、その制約が改善されることになる。

 ファルコン9は、今年6月に打ち上げに失敗し、現在は原因の調査と、対策が行われている最中にあるが、同社のイーロン・マスクCEOは、数か月以内にも打ち上げを再開したいとし、またその再開1号機で、この改良型ファルコン9を投入したいと述べている。

 搭載される衛星はルクセンブルクの衛星通信会社であるSES社の「SES-9」で、この衛星は打ち上げ時の質量が5330kgもあるため、従来型のファルコン9では打ち上げることすらできないが、改良型では着陸脚と追加の推進剤を積めるだけの余裕も生まれることになる。

 改良型ファルコン9ではまた、着陸脚や、降下時に姿勢を制御するためのフィンも改良されており、このSES-9の打ち上げで、通産8回目となる回収試験に挑むとしている。

■SpaceXさんはInstagramを利用しています:「Upgraded Merlin rocket engine with special black coating for thermal testing」
https://instagram.com/p/6gYIwJl8ZH/

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