「エンジン半開」の「TOPIXコア30」銘柄に「エンジン全開」を期待してアプローチ=浅妻昭治

2015年3月2日 10:33

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

 安倍晋三首相のセールストークがマーケットの話題になりました。前週2月24日後場のことです。詳しい講演の内容は、内閣広報室が動画配信している政府インターネットテレビで確認していただくとして、「エンジン全開の今年の日本を皆さん、買わない手はないと思いませんか」と訴えました。「アベノミクス」の最大の成果は株高で、日銀のETF(上場投信)買いなどをテコにした「官製相場」などと皮肉る向きもあるようですが、さらにこれに買い援軍の要請をしたもので、流行語風に言いますと「いつ買うの?今でしょ」というわけです。このため、24日後場の日経平均株価は、このセールストークをハヤして続伸幅を伸ばして高値引けし、15年ぶりの高値となりました。

 安倍首相のスピーチ上手には、定評があります。例の2020年の東京オリンピック招致の決め手となった2013年9月のIOC(国際オリンピック委員会)総会での最終プレゼンテーションや、訪米中に「バイ・マイ・アベノミクス」などとピーアールしたことなどでも明らかです。ですが一つ残念なことは、安倍首相は、このように「日本買い」を強力訴求しながらも、ではどの銘柄を買えばいいかまでの具体的なポートフォリオへの言及がなかったことです。マーケットでは、総論の強気観測では当たっていながら、各論の肝心の銘柄選択では全然、的外れとなり芳しいパフォーマンスにつながらないケースは多々ありますから、「八百屋の店頭に並ぶカブ以外のカブはすべて買い」ともいかず、ここは投資家個々も一筋縄ではいかないとそれなりに迷うことになりそうです。

 ただセールストークをよく噛みしめてみると、投資対象銘柄選択のヒントがないこともなかったようで、注目される件がありました。企業が、「守りの経営」から「攻めの経営」に舵を切り、空前の規模の手元資金を活用して設備投資、企業買収を積極化し、賃上げに動き、株主への配当も厚くしていると指摘した部分です。このうち賃上げは、首相就任以来、デフレマインドを払拭する経済の好循環の引き金として、しばしば経済団体へ活発に働き掛けてきました。かつての「日本株式会社」は、「政・官・財」の三極体制がきっちりと構築され、「官」は「政」に弱く、「政」は政治献金や選挙協力を仰ぐ「財(民)」に弱く、「財(民)」は規制官庁の「官」に弱いいわゆる三すくみ体制でバランスを保っていましたが、「官」は規制緩和で地盤沈下し、「政」も、安倍内閣の「一強多弱」体制が極まってみると「財(民)」とのパワー・バランスが逆転、政治主導体制が鮮明化しています。安倍首相が、法人税引き下げのアメの見返りにムチを入れ檄を飛ばせば、「財(民)」にとっては、相当な政治プレッシャーとなります。ということは、設備投資や企業買収を積極化し、賃上げや増配にも前向きな企業が、安倍首相の御眼鏡にかない関連妙味株に浮上するはずです。

 具体的に安倍首相が期待し「アベノミクス」の成長戦略の見本になりそうな銘柄は、すでに一部動き出していますが、さらに大きなウネリとなるのは日本を代表する銘柄に違いありません。かつてのいわゆる「経団連銘柄」、今風にいうと、新株価指数「TOPIXコア30」の構成銘柄に選定されている30銘柄です。この30銘柄にアプローチ余地が出てきますが、30銘柄すべて買いとするには資金的な限界もあります。かといって「コア30」連動型のETFを投資対象とするには抵抗がある向きもあるはずで、そうなると「コア30」銘柄の選別物色が必要になります。

 さて、選別物色することに納得していただいたとして、ここでもう一つの問題が出てきます。折角の安倍首相のセールストークに水を差すようですが、「エンジン全開」銘柄は果たして安倍首相が強調されるように本当に「買い」なのかという問題です。マーケットでは普通、「エンジン全開」は、スピードも飛行高度もそれ以上上がらないとして材料出尽くしとして高値掴みにないやすいとして敬遠されてきたからです。このマーケットの投資セオリーが正しいとすれば、「エンジン全開」銘柄か、「エンジン半開」銘柄か、「エンジン始動」銘柄か、それともまったく投資圏外の「エンジン停止」銘柄か的確に判断しなくてはならないことになりますが、その際の銘柄スクリーニングのテクニカル分析では、日足チャートでも週足チャートでもなく、ぜひ月足チャートを参照していただくことをお勧めします。

 というのは、全般相場は、日経平均株価が15年ぶりの高値、TOPIX(東証株価指数)が7年2カ月ぶりの高値となり、「コア30」銘柄では、ファナック <6954> がすでに上場来高値追いとなり、トヨタ自動車 <7203> も、2007年2月につけた上場来高値8350円を指呼の間としているなど、株価指数、個別銘柄ともこの2~3年の上値フシを一気に上抜くケースが続出する一種、ブーム状態を呈しています。これが、まだエンジンが始動したばかりの強気相場の初動段階なのか、それとも全開状態の無理矢理の官製相場の行き過ぎなのかなど判断するには、個々の銘柄が、かつての高値に対してどの程度の株価ポジションにあるのか、ヒストリカルな視点が欠かせないからです。月足チャートを参照してエンジンが「全開」か「半開」か「始動」か、あるいは「停止」かなど、見極める必要があるということです。

 「勝ち馬に乗れ」というのは、勝負の鉄則で株式投資でも必勝法にもなりますから、「コア30」銘柄への投資も、「エンジン全開」銘柄のパフォーマンスがより大きくなるかもしれません。しかしここでは、そんなこんなやで敢えてPER・PBR・配当利回りなどの投資尺度も勘案して、「エンジン半開」銘柄に「エンジン全開」を期待してアプローチしようと思います。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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