大規模土砂災害の発生で「アベノミクス」の国土強靭化計画の真価が問われ株価材料に浮上=浅妻昭治

2014年8月25日 15:40

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  気象庁が、今年の夏に「エルニーニョ現象」が5年ぶりに発生すると予報したのは、今年4月のことであった。北日本を中心に気温が平年を下回る冷夏が懸念され、前回、エルニューニョ現象が発生した2009年に起こった九州北部豪雨による大規模災害の再来の不安も高まった。幸いなことに、その後、日本列島は、全国的に記録的な猛暑に見舞われ、気象庁も、7月に入って今夏のエルニーニョ現象の発生の可能性は低くなり、秋以降にズレ込むと見通しを変更した。

  それにもかかわらず異常気象は頻発した。気象庁が、「平成26年8月豪雨」と命名した九州、西日本、東北の各地方で頻発した局地的豪雨である。この豪雨により8月20日には広島市安佐南区・北区では大規模土砂災害が発生し、多くの死者・行方不明者、家屋損壊が起こる大惨事が起こり、いまでも悪天候が続くなか行方不明者の捜索が行われている。

  こうした犠牲者、被災者、被災地を前に当コラムでこの大規模災害を株価材料として取り上げるのは申訳ない気がする。しかし、今回の大惨事を報道する新聞、テレビをウオッチすると、この大規模災害は、異常気象による自然災害であるのは間違いないが、事前に防止できたとする指摘が目についた。「巨大地震はいつどこで発生するか未解明だが、大規模土砂災害はどこで発生するか十分に分かっていた」というのである。その防止のための法的体制も土砂災害防止法として2001年に施行済みで、この行政的対応の遅れが、今回の大惨事の一因となったと分析されているのである。この問題こそが、この大惨事を2度と繰り返さず、犠牲者の冥福にもつながるものとして敢えて当コラムで取り上げることとした次第である。

  土砂災害防止法は、1999年6月に今回と同じ広島市や呉市で集中豪雨により土砂災害が325件も発生し、24名もの犠牲者が出たことが、制定のキッカケとなった。同法は、土砂災害を防止するために各自治体にハード・ソフトの両面からの対策を実施することを目的としている。全国には、52万4769カ所もの土砂災害の危険箇所があり、ここに砂防えん堤などの各種砂防施設を構築するなどのハード対策とともに、危険個箇所を警戒区域、特別警戒区域に指定してハザードマップを作成・配布して警戒避難体制を整備するソフト対策も推進することが想定された。

  ところが、法律が施行されて13年も経過したというのに、52万5307カ所の土砂災害危険箇所のうち、実際に警戒区域に指定されているのは35万4769カ所にとどまっているというのだ。今回、大惨事に見舞われた広島市の50カ所にのぼった災害現場でも、警戒区域に指定されていたのは一部に限定されたと報道されている。

  この理由については、すでに新聞、テレビで詳しく分析されている。自治体側からすれば、警戒区域の指定のためには、基礎調査やハザードマップの作成のためなどに多額の予算措置や地域住民の合意形成が不可欠という難問に直面する。一方、住民側にとっては、警戒区域に指定されると、土地を売却する場合に相手方に説明責任が生じるなど地価の下落の心配があり、特別警戒区域に指定されると、区域内の建物の建設が制限されたり、移転を迫られる場合もあるなど、なかなかおいそれと合意するわけにいかない事情が働いているという。

  この問題については、早速、古屋圭司防災大臣(国土強靭化担当大臣)が、政府・与党で土砂対策防止法改正の検討を開始すると表明している。全国では、なお北海道、京都などで記録的な大雨が続いており、毎年、平均して約1000件の土砂災害が発生し、さらに台風シーズン、秋の長雨時期を控えて異常気象が恒常化する懸念のなか、ことは緊急を要する。9月早々にも内閣を改造して発足する第2次安倍内閣の急眉の政治課題に浮上することになる。まさに今年6月に閣議決定された「アベノミクス」の国土強靭化基本計画、国土強靭化アクションプラン2014年の真価が問われる正念場を迎えることになる。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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