中国の防空圏設定、日米の対応に温度差はあるのか?

2013年12月6日 09:46

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記事提供元:フィスコ


*09:46JST 中国の防空圏設定、日米の対応に温度差はあるのか?
日本と中国、韓国を歴訪している米国のバイデン副大統領ですが、中国訪問では「防空識別圏」の撤回自体は要求せず、日本のメディアでは“日米に温度差”などと騒がれています。

米国が中国に伝えた懸念の重点は「一方的に設定されたこと」および「運用面での安全性」。ヘーゲル米国防長官は4日の記者会見で、「防空圏を設定すること自体は新しくも珍しくもない。最大の懸念は一方的になされたことだ」と話しました。

さて、この防空識別圏は、そもそも2001年9月11日に発生した米同時多発テロに端を発しています。目的は米国に向かう航空機を完全に把握することで、テロリストなど危険分子が領空・領土に入るのを事前に察知し、防ぐことにあります。

ここでは航空の自由は制限されておらず、米国側の対応は「防空圏の設定は航空の自由を妨げないが、中国は自国の領空に準じた対応を宣言した」(12月6日付日経)点が問題だと指摘していると考えられています。

また、防空圏の設定は、基本的に領土紛争の存在しない地域に限られています。沖縄県・尖閣諸島について、日本政府は「紛争は存在しない」、中国側は「存在する」と、立場を異にしています。日本は識別圏の撤回を求めていますが、この論理でいけば「領土問題の存在しない地域に識別圏を設定して何が悪い」「日本は尖閣に紛争が存在することを認めるのか」というレトリックにも陥りかねません。

さて、今回の識別圏のような地政学リスク、および政治リスクは金融市場でも無視できません。シティグループは、金融市場は政治イベントに対してボラティリティ(変動率)が高まりやすいとのリポートを発表しました。わかりにくい政治世界を市場が織り込みにくいという事情があるのでしょうが、中国の台頭で国際政治での力関係が変化する中、注意は必要になってきそうです。

(フィスコ・リサーチ・レポーター)《RS》

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