【アナリスト水田雅展の銘柄分析】トヨタ自動車は6000~6500円のモミ合いが2ヶ月、上放れの時期接近

2013年9月17日 10:45

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

  トヨタ自動車 <7203> の株価は戻り高値圏でボックス展開の形だが、煮詰まり感も強めてきた。業績上振れの可能性が高いだけに、ボックスレンジから上放れて5月の高値を試す動きを強めるだろう。

  技術力、品質力、そして原価低減力に強みを持つ世界的自動車メーカーであり、円高修正の恩恵も大きい。国内生産を維持しながら海外生産も拡大して生産・販売台数を着実に伸ばしている。13年暦年のグループ世界生産台数も、当初計画に対して18万台上積みの1012万台とした。世界の自動車メーカーで初めて1000万台を超える見通しだ。HV(ハイブリッド自動車)などエコカー分野で世界をリードする構図にも変化はない。

  今期(14年3月期)第1四半期(4月~6月)は、小売ベースでのグループ世界販売台数が前年同期比0.2%減少した。国内、欧州、アジアなどがやや低調だった。しかし北米が増加し、為替の円高修正が寄与して営業損益が大幅に改善した。平均為替レートは1米ドル=99円、1ユーロ=129円で、前年同期に比べて米ドルで19円、ユーロで26円それぞれ円安だった。利益増減要因分析を見ると営業利益の増益3102億円のうち、為替変動の影響が2600億円の増益要因となった。

  通期の連結業績(米国基準)見通しは8月2日に増額修正して、売上高が前期比8.8%増の24兆円、営業利益が同46.9%増の1兆9400億円、税前利益が同44.6%増の2兆300億円、純利益が同53.8%増の1兆4800億円とした。配当は未定としているが、配当性向30%を目安に今後増配を続けていく方針を示している。

  小売ベースでのグループ世界販売台数については同4.2%増の1010万台で据え置いた。欧州や中国での回復がやや鈍く、タイ、インド、インドネシアなどアジアの新興国市場ではマネー流出に伴う景気減速がマイナスに影響しそうだ。しかし主力の北米市場では好調な販売が続いているため、円高修正による営業損益改善効果も大きい。HVが好調な国内では消費増税前の駆け込み需要も追い風となりそうだ。

■通期の為替1ドル・92円で想定、円安効果見込める

  通期の想定為替レートは1米ドル=92円、1ユーロ=122円として、期初計画に比べて米ドルで2円、ユーロで2円それぞれ円安方向に見直したが、13年7月以降については1米ドル=90円、1ユーロ=120円の想定としている。8月2日発表の通期増額修正は、第1四半期の前提レートと実勢レートの差の分だけ増額修正したとしており、7月以降の為替レートの水準を考慮すれば通期の再増額が濃厚である。なお1円の変動による営業利益への影響額は米ドルで400億円程度とされている。

  将来的にはHVやEV(電気自動車)などエコカーの普及が期待されているが、すでにHVの分野では世界的に他を寄せ付けない圧倒的な実績を誇っている。15年ごろの発売が予想される次期プリウスも、現行プリウスに比べて燃費効率が一段と向上するようだ。EVや燃料電池自動車なども含めて、エコカーの分野で世界をリードする構図に変化はないだろう。

  株価の動きを見ると、5月23日の年初来高値6760円から反落して6月7日の5360円まで調整した。しかし6月7日安値をボトムして反発し、7月以降は概ね戻り高値圏の6000円~6500円近辺のレンジで堅調に推移している。9月13日の終値6280円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS467円09銭で算出)は13~14倍近辺、実績PBR(前期実績の連結BPS3835円30銭で算出)は1.6倍近辺である。通期再増額の可能性を考慮すれば割安な水準とも言えるだろう。

  週足チャートで見ると、一時的に13週移動平均線を割り込む場面もあったがが、概ねサポートラインとして機能しているようだ。足元は戻り高値圏でボックス展開の形だが、煮詰まり感も強めてきた。ボックスレンジから上放れて5月の高値を試す動きを強めるだろう。当面のターゲット水準は7000円台回復だが、通期業績見通しの再増額を発表すれば07年2月の高値8350円が視野に入るだろう。(ジャーナリスト&アナリスト水田雅展)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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