富士フイルムが新開発の再生医療用RCPを使い細胞集合体内に血管形成

2012年6月12日 11:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 富士フイルムが、再生医療に必要な細胞生育・増殖のための「足場」として再生医療用のリコンビナントペプチド(RCP)を用い、厚さ1mmを超える細胞集合体を作り、その細胞集合体を移植して、生体組織と結合した血管を細胞集合体に形成させることに世界で初めて成功したと発表。今回の実験では、移植後すみやかに細胞集合体と生体組織との間に血管形成が認められ、移植後4週間以上にわたって移植細胞が生存していることが確認された。

 再生医療とは、人工的に培養した細胞や組織などを移植して、損傷した臓器や組織を再生し、患部の機能を回復させる医療技術。これまでに、多様な体性幹細胞の培養法が確立され、またiPS細胞の研究進展によりさまざまな細胞の再生医療への使用が現実的になってきている。しかし、培養した細胞の生体への移植方法はいまだ開発途上にあり、たとえば、厚さ400μmを超える細胞集合体は、移植後に栄養や酸素の供給を内部まで十分に行うことができないため、体内に移植することは困難と言われていた。

 今回、富士フイルムは、細胞が正常に生育・増殖するために必要な「足場」、再生医療用のRCPとして、ヒトコラーゲンの遺伝子を酵母細胞に組み込んで遺伝子工学により細胞培養で作製したヒトコラーゲン型の蛋白質を新たに開発。これを用いることで、体外で厚さ1mmを越える細胞集合体を作ることに成功したという。また、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと共同でこれを動物に移植し、集合体内部の組織が2週間以上にわたって生存したことを確認。さらに、細胞集合体に血管内皮前駆細胞を組み込むことで、移植した細胞集合体内に5日間で血管を形成させ、細胞集合体と生体組織との間で血管を結合させることに成功したとのこと。このことにより、移植後4週間以上の生存が確認でき、細胞の持続的な機能発現が可能になったという。RCPは動物由来物質を用いる必要がなく、様々な臓器の細胞の生存・機能発現に最適なアミノ酸配列を設計が可能、さらに、生体内で分解された場合にも、周辺の組織を傷める酸などの生成がないため、今後、幅広い応用が期待できる。

 iPS細胞をはじめ、再生医療の分野で世界をリードする日本。こうした功績を、研究機関ではなく企業が残したことにも大きな意味があるであろう。一日も早く、人での実用化を実現することを期待したい。

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

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