【相場展望】売られ過ぎの反動で一旦は買い戻しも、ただし積極的な買いは期待薄

2011年11月27日 16:39

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

【株式市場フューチャー:11月28日~12月2日の株式市場見通し】

■ユーロ圏主要国の国債利回り上昇すれば下値模索の可能性

  来週(11月28日~12月2日)の日本株式市場については、世界的なソブリンリスクや景気減速に対する警戒感が強く、海外要因に神経質な地合いに変化はないが、売られ過ぎの反動で一旦は主力銘柄を中心に買い戻しが先行する可能性があるだろう。

  前週末25日の米国株式市場でダウ工業株30種平均株価は、年末商戦に向けた期待感で上昇する場面もあったが、イタリアなどの国債利回り上昇、格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によるベルギー国債格付け引き下げなどで警戒感が強まり、結局は4営業日続落となった。しかしドル・円相場で1ドル=77円70銭台に円が下落し、ドル高・円安方向に振れた。このため週初28日は、ドル・円相場での円の下落が輸出関連銘柄にとっての支援材料となりそうだ。

  ただし、ユーロ圏主要国の国債入札が相次ぐことに加えて、11月29日のユーロ圏財務相会合、30日のEU財務相理事会、12月2日の米11月雇用統計など重要イベントの動向を見極めたいとして、引き続き手控えムードが強く積極的な買いは期待薄だろう。基本的には底練りの展開となりそうだ。特にユーロ圏の債務危機問題に関しては、国債利回り上昇がドイツやフランスなどの主要国にも波及しているため、利回りが一段と上昇する動きになれば、株式市場は下値を模索する可能性が高まるだろう。一方で、ユーロ圏財務相会合でEFSF(欧州金融安定基金)のレバレッジ策などに関して具体的な合意が得られれば、主要国の国債利回りが落ち着き、過度な警戒感が和らいで買い戻しが継続する可能性もあるだろう。

  前週(11月21日~25日)の日本株式市場では、ユーロ圏の債務危機問題や世界的な景気減速などに対する警戒感で手控えムードが強く、日経平均株価(225種)、TOPIXともに、4週連続の下落となった。日経平均株価の25日終値は8160円01銭で5営業日続落となり、4営業日連続の年初来安値更新となった。TOPIXは21日の終値717.08と、24日の終値706.08で年初来安値を更新した。東証1部市場の売買代金は25日まで9営業日連続の1兆円割れとなった。

  ユーロ圏の債務危機問題については、イタリア、スペイン、フランスの国債利回り上昇、フランス国債の格付け引き下げの噂などに続き、ドイツの10年債入札が大幅な札割れとなって利回りが上昇した。ベルギーやポルトガルの国債利回りも上昇したため、一段と警戒感が強まった。24日の独仏伊首脳会談では、ユーロ安定に向けてEU各国への予算介入権を盛り込む条約改正案で一致したが、市場が期待するECB(欧州中央銀行)の役割拡大やユーロ共同債の導入については、メルケル独首相が反対の立場を強調したため債務危機問題が長期化するとの懸念が広がった。しかし一方では、ユーロ共同債の導入やユーロ圏の財政統合に向けた動きに対して、いずれドイツも同調せざるを得ないとの見方も広がり始めており、EFSFのレバレッジ策の早期具体化とともに焦点となっている。

  米国の主要経済統計を見ると21日には、米10月シカゴ連銀全米活動指数がマイナス0.13と前月比で小幅改善した。米10月中古住宅販売件数は前月比1.4%増となって市場予想以上に改善した。22日には、米7~9月期実質GDP1次改定値が前期比2.0%増(季節調整済み年率換算)となり、速報値の2.5%増から下方修正されて市場予想の2.5%増を下回ったが、前期の1.3%増を上回った。また23日には、米10月個人消費支出が前月比0.1%増加した。米10月耐久財受注は前月比0.7%減少した。米11月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値は64.1で速報値とほぼ同水準だった。米新規失業保険申請件数は39.3万件だった。

  また23日には、英HSBCが発表した中国10月PMI(製造業購買担当者景気指数)が09年3月以来の低水準となり、ユーロ圏11月製造業PMI(購買担当者景況指数)速報値も46.4と弱い内容だったことで、中国やユーロ圏の景気に対する警戒感が強まった。

  国内要因としては、世界的な景気減速などで業績下振れに対する警戒感が根強く、週後半には日本国債格付け引き下げ懸念などで10年債利回りが上昇したことも警戒感につながった。ただし業績下振れ懸念は株価にかなり織り込んだ可能性が高いだろう。円の高止まりは引き続き懸念要因だが、タイの洪水被害に関しては生産正常化が進み、業績への影響額が当初見通しよりも小さくなる可能性も浮上している。

  テクニカル面では、日経平均株価(25日時点の8160円01銭)の25日移動平均線(同8624円13銭)に対する乖離率はマイナス5.38%となり、前週末に比べてマイナス乖離を広げた形である。また東証1部市場の騰落レシオ(25日移動平均)は25日時点で76.9%となっている。一旦はリバウンド局面となる可能性があるだろう。

■注目スケジュール

  来週の注目スケジュールとしては、国内では、11月29日の10月完全失業率、10月有効求人倍率、10月家計調査、10月商業販売統計、30日の10月鉱工業生産速報、10月毎月勤労統計、10月住宅着工戸数、10月大手建設受注、12月2日の7~9月期法人企業統計、11月マネタリーベースなどがあるだろう。その後の重要イベントとしては、15日の日銀短観、20日~21日の日銀金融政策決定会合などが予定されている。

  海外では、11月28日の独11月消費者物価指数速報値、独12月消費者信頼感指数、ユーロ圏10月M3、米10月新築1戸建て住宅販売、米10月住宅着工許可件数改定値、OECD経済見通し、EU・米首脳会談、米サンフランシスコ地区連銀のアジア経済政策コンファレンス(~30日)、29日のユーロ圏11月景況感・業況感指数、ユーロ圏財務相会合、米9月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米9月住宅価格指数、米11月消費者信頼感指数(コンファレンスボード)、米週間チェーンストア売上高、米週間レッドブック大規模小売店売上高、イエレン米FRB副議長の講演、ロックハート米アトランタ地区連銀総裁の講演、ブラジル中銀金融政策会合(~30日)、30日のユーロ圏10月失業率、ユーロ圏11月消費者物価指数速報値、EU財務相理事会、米10月住宅販売保留指数、米11月ADP雇用リポート、米11月企業人員削減数、米11月シカゴ地区購買部協会景気指数、米地区連銀経済報告、米第3四半期労働生産性・単位労働コスト改定値、米住宅ローン・借り換え申請指数、ブラジル中銀金融政策会合(最終日)、12月1日の中国10月PMI、ユーロ圏11月製造業PMI改定値、米10月建設支出、米11月ISM製造業景気指数、米11月自動車販売台数、米新規失業保険申請件数、WTO一般理事会(~2日)、2日のユーロ圏10月生産者物価指数、米11月雇用統計などがあるだろう。その後の重要イベントとしては、8日のECB理事会(金利発表と記者会見)、9日のユーロ圏首脳会議、13日の米FOMC(声明発表)などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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