【外国為替市場を検証:ユーロ・円相場】ユーロ売りが加速、01年7月以来の円高水準

2011年9月10日 20:24

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

【外国為替市場フラッシュ:9月5日~9日の週のユーロ・円相場】

■9日の海外市場で1ユーロ=105円30銭台まで円が上昇

  9月5日~9日の週の外国為替市場では、ユーロ売りが加速した。ユーロ・円相場は週末9日の海外市場で、一時1ユーロ=105円30銭台まで円が上昇し、01年7月以来の円高水準となった。ユーロ圏のソブリンリスク、特にギリシャのデフォルト(債務不履行)懸念が強まった。リセッション(景気後退)に対する警戒感も強く、トリシェECB(欧州中央銀行)総裁の「欧州経済の不安定性は極度に高い」との発言で、利上げ打ち止め観測も広がった。

  ユーロ・円相場の1週間の動きを振り返ってみよう。前週末2日の海外市場では一時1ユーロ=108円80銭台に円が上昇した。ギリシャやイタリアの債務問題に対する警戒感が強まり、ユーロ売りが加速した。その後は1ユーロ=109円00銭~10銭近辺での展開となった。

  この流れを受けて、週初5日の東京市場でもユーロ売り優勢の展開となり、概ね1ユーロ=108円30銭台~80銭台で推移した。ドイツの地方選挙でメルケル首相率いる与党が敗北したこともユーロ売り材料となった。5日の海外市場でもユーロ売りが加速し、一時1ユーロ=108円10銭台に円が上昇した。ギリシャ債務問題でEU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)の合同調査団が審査を中断したため、ギリシャ国債利回りが急上昇して警戒感が強まった。

  6日の東京市場では1ユーロ=108円台前半でスタートした後、ユーロ売りが優勢となって一時1ユーロ=107円80銭台に円が上昇した。その後は1ユーロ=108円30銭近辺に円が下落した。6日の海外市場では乱高下した。東京市場終了後に、スイス国立銀行(中央銀行)が対ユーロでの最低為替レートを設定し、さらに無制限の為替介入の用意があるとしてスイスフラン高の抑制策を発表した。これによってスイスフランが急落した。ユーロ・円相場では円売り優勢となり、一時1ユーロ=109円90銭台まで円が急落した。しかし円売り一巡後は、ソブリンリスクに対する警戒感で再びユーロ売り圧力が強まり、1ユーロ=108円台前半~半ばに円が上昇した。

  7日の東京市場では、概ね1ユーロ=108円30銭台~80銭台で推移した。日銀金融政策決定会合で追加緩和策が見送られたためユーロ売り・円買いが優勢になる場面もあったが、ドイツのユーロ圏金融支援参加を違憲とする訴訟に関して、ドイツ連邦憲法裁判所の判決を控えていたため小動きだった。7日の海外市場では、概ね1ユーロ=108円30銭台~80銭台で推移した。ドイツ連邦憲法裁判所がギリシャ金融支援への参加の合憲性に対する訴訟を退けたことや、イタリア議会上院が緊縮財政案を承認したことでユーロ買いが優勢となり、一時1ユーロ=109円00銭台に円が下落する場面もあった。しかしソブリンリスクに対する警戒感が根強く、再びユーロ売り優勢となった。終盤には8日のECB理事会を控えて様子見ムードも強めた。

  8日の東京市場では、概ね1ユーロ=108円70銭台~90銭台で推移した。ECB理事会、バーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長の講演、オバマ米大統領の景気・雇用対策に関する議会演説、G7(主要7カ国)財務相・中央銀行総裁会議(9日~10日)などの重要イベントを控えて、様子見ムードの強い展開だった。8日の海外市場では1ユーロ=108円台後半でスタートしたが、その後1ユーロ=107円50銭台まで円が上昇した。ECB理事会では政策金利を据え置いたが、記者会見でトリシェECB総裁が「欧州経済の不安定性は極度に高い」と発言したため、利上げ打ち止め観測が広がってユーロ売りが加速した。

  9日の東京市場では、概ね1ユーロ=107円60銭近辺~108円00銭近辺で推移した。G7財務相・中央銀行総裁会議を控えていたうえに、9日を期限とするギリシャ金融支援の民間負担への参加率を見極めたいとして、様子見ムードを強めた。9日の海外市場では1ユーロ=107円60銭近辺でスタートした後、ユーロ売りが加速した。一時1ユーロ=105円30銭台まで円が上昇し、01年7月以来の円高水準となった。ECBのシュタルク専務理事の突然の辞任報道に対して、ギリシャなどへの金融支援策に関するECB内部の意見対立が警戒された。ギリシャ金融支援に関しては、EUとIMFの合同調査団が審査を中断していることもあり、ユーロ加盟国間での足並みの乱れが顕在化し始めたとして警戒感が強まった。ギリシャ政府がデフォルトを宣言するとの噂も広がった。終盤は1ユーロ=106円近辺で推移した。ギリシャ財務省のデフォルト否定声明を受けて、ややユーロが買い戻された。

  ECBによるイタリアとスペインの国債購入開始によって、ソブリンリスクに対する当面の過度な警戒感は和らいだ形だったが、ギリシャ金融支援に対するユーロ加盟国間の足並みの乱れが再び顕在化し、ギリシャのデフォルトに対する懸念が強まった。スペインやイタリアに関する警戒感がくすぶり、ユーロ圏のリセッションやECBの利下げに対する警戒感も強いが、当面はギリシャのデフォルト懸念の落ち着きが焦点だろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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