スウェーデンの共同AI基盤「Sferical One」正式発表、GPU 1,152基を産業5社で活用

2026年10月17日 14:16

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記事提供元:Tech Times

(Pexels/ panumas nikhomkhai)

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AstraZeneca、Ericsson、Saab、SEB、Wallenberg Investmentsが設立したSferical AIは2026年10月15日、共有AIスーパーコンピューター「Sferical One」をストックホルムで正式発表した。システムは同年夏の終わりからスウェーデン国内で稼働しており、各社が計算資源、投資、専門知識を共有する。SKFも戦略パートナーとして参加している。

■Blackwell Ultra GPUを1,152基搭載

Sferical Oneは、NVIDIAのDGX GB300システム16台を基盤とする。NVIDIAによると、2基のDGX SuperPODで構成され、合計1,152基のGPUを備える。参加企業は、機密性の高いデータを扱うAIの開発や運用に、この計算資源を利用する。

NVIDIAの製品仕様では、DGX GB300は1ラックにBlackwell Ultra GPUを72基、Grace CPUを36基搭載する液冷式システムだ。16ラックのGPU数を合計すると1,152基になる。ラックごとにGPUメモリ20TB、最大メモリ帯域幅は毎秒576TBとされる。

この公称仕様を16台分合計すると、GPUメモリは約320TB、最大メモリ帯域幅は毎秒9,216TBとなる。FP4演算性能も仕様上の合計で、密行列では約17.3エクサFLOPS、疎行列では約23.0エクサFLOPSだ。いずれも個々のシステムの公称値を足し合わせた値で、Sferical One全体の実測値を示すものではない。

■ラック内とラック間で異なる通信

各DGX GB300の72基のGPUは、第5世代NVLinkで結ばれる。NVIDIAの仕様では、ラック内のNVLink帯域幅は合計毎秒130TBだ。GPU同士が高速にデータをやり取りできるため、大きなモデルの学習や推論で処理を分担する際に役立つ。

ラックをまたぐ処理には、ラック内とは別のネットワークが関わる。DGX GB300はGPU当たり最大800Gbpsの接続に対応するConnectX-8を備え、NVIDIAはInfiniBandとEthernetの構成を案内している。モデルの規模だけで必要なラック数や処理速度が決まるわけではなく、学習・推論の方法やデータの配置も影響する。

NVIDIAが公開するDGX GB300のソフトウェア構成には、運用管理用のMission ControlとNVIDIA AI Enterpriseが含まれる。Sferical AIは共有基盤の上で、各社の用途に応じたAI開発を進める。

■創設5社とSKFの活用分野

Sferical AIは2025年8月、AstraZeneca、Ericsson、Saab、SEB、Wallenberg Investmentsの5社によって発足した。2026年4月には、軸受などを手がけるSKFが戦略パートナーとなり、計算資源を利用することを発表した。SKFは予知保全、品質管理、研究開発などを活用分野に挙げている。

Sferical AIの発表によると、AstraZenecaは創薬、Ericssonは通信分野の基盤モデル、Saabは防衛用途、SEBは金融サービスでの利用を検討している。各社が扱うデータや用途は異なるが、計算設備と開発上の知見を共有する構想である。

Ericssonは、AIを使ったネットワーク運用と自社の通信網・自動化技術の開発に基盤を活用すると説明する。同社CTOのErik Ekudden氏は、安全で信頼性の高いネットワークを支えるAIモデルの開発に向け、Sfericalを通じて管理可能な計算基盤にアクセスできると述べた。将来の通信網については、異なるAIシステムを接続する「6G/AIインテリジェント・ファブリック」の構想を示している。

Wallenberg Investments会長のMarcus Wallenberg氏は、AIをスウェーデン産業の将来の競争力に関わる技術と位置付け、今回の基盤を必要な能力と専門知識への長期投資だと説明した。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOも発表式典に出席し、共同事業の始動を評価した。

■共同開発を支える人材とオープンモデル

Sferical AIのCEOはJenny Nordlöw氏、会長はAnders Ynnerman氏が務める。Nordlöw氏は、複数の大企業がインフラだけでなく、解決策の開発や業界を越えた知識も共有する点に事業の価値があると説明している。同社は、参加企業と自社チームがAIを共同開発する「Sferical Labs」も運営する。

Saabの役員紹介によると、Ynnerman氏はスウェーデンの国立計算基盤SNICとリンシェーピング大学の国立スーパーコンピューターセンターNSCを率いた経験を持つ。現在はKnut and Alice Wallenberg Foundationの戦略研究ディレクターを務め、Saabの取締役でもある。公的な大規模計算基盤での経験は、産業向けの共有設備を運営するうえでも重要な知見となる。

Sferical AIは、NVIDIAのオープンウェイト型マルチモーダルAIモデル「Nemotron」を基にサービスを構築する方針だ。オープンウェイトとは、公開された学習済みの重みを利用し、利用者が自社の環境でモデルを動かしたり、用途に合わせて調整したりできる形態を指す。同社は、参加企業が重みを確認し、各社の安全管理要件に合う環境でモデルを実行できると説明する。

NVIDIAのNemotronシリーズには、総パラメータ数300億の「Nemotron 3 Nano Omni」、1200億の「Nemotron 3 Super」、5500億の「Nemotron 3 Ultra」などがある。Nano Omniでは処理時に約30億、Superでは約120億のパラメータが有効になる。Sferical AIの発表はNemotronを使う方針を示しているが、各社が利用する個別モデルまでは特定していない。

■データ管理と共同投資の狙い

医薬品、防衛、金融、通信では、機密情報や個人データの扱いと、計算基盤へのアクセス管理が重要になる。Sferical AIはスウェーデン国内に共有基盤を置き、参加企業が重要なインフラをより管理しやすくする構想を掲げる。SKFも、設計情報などの知的財産を保護しながら産業用AIを進める点を参加理由に挙げている。

EU一般データ保護規則(GDPR)では、個人データをEU・EEA域外へ移転する場合、移転先に対する十分性認定や適切な保護措置などが関わる。欧州銀行監督機構(EBA)のクラウド利用指針も、データの保管・処理場所、監査権、外部委託先の管理などを重視する。企業は用途ごとに、法令対応と情報管理の方法を検討する必要がある。

米国のCLOUD Actは、米国の法的管轄に服する事業者が保有・管理するデータについて、保存場所が国外でも適法な開示命令の対象となり得ることを定める。計算設備を共同で管理する方式は、参加企業にとってデータの扱いと運用条件を設計する一つの選択肢になる。

Sferical AIは、各社が同種の設備を個別に整える代わりに、投資、計算資源、専門知識を共同化する。設備を持つことに加え、異業種が利用経験を持ち寄れる点も、この事業の特徴だ。

■北欧で進むAI基盤整備と今後

NVIDIAは2026年10月、北欧のAIクラウド事業者について、2027年末までに地域全体で約1GWの設備容量を導入するとの見通しを示した。事業者としてBitdeer、CoreWeave、Crusoe、Hyperstack、Nscale、Verda、Voltaを挙げている。これは北欧全体の予測であり、Sferical Oneの設備容量を示す数値ではない。

スウェーデンでは、公的資金を活用する「Sweden AI Factory」も進む。欧州高性能計算共同事業体(EuroHPC JU)によると、同事業は新興企業、中小企業、研究者などを支援し、専用スーパーコンピューターをリンシェーピングに設置する計画だ。既存の産業企業が共同利用するSferical Oneとは、主な利用者と運営の枠組みが異なる。

産業の裾野も広い。調査会社Dealroomの2026年10月12日時点の集計では、スウェーデンの新興企業の資金調達額は同年1~9月に46億ドル(約7270億円)に達した。同社は、その時点の実績を基に年間約61億ドル(約9600億円)と予測している。

Sferical Oneでは、すでに参加企業が用途の検討と活用を始めている。今後は、異なる業界の需要を一つの基盤でどう支え、計算資源をどう拡張するかが運営上の焦点となる。NVIDIAのフアン氏は式典で、参加企業に向けて「最も難しいことを成し遂げた。始めたことだ」と語った。

元記事: Sferical One Goes Live: Swedish Industry Coalition Shares 1,152 Blackwell Ultra GPUs

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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