生理研、うつ病治療薬の新たな作用機序を発見

2018年6月17日 18:31

印刷

研究内容の模式図。(画像:生理学研究所発表資料より)

研究内容の模式図。(画像:生理学研究所発表資料より)[写真拡大]

 うつ病は社会的影響の大きな疾患であり、その解明は切迫した課題であると言える。その病態は、セロトニンやノルアドレナリンなどのエンドルフィンの欠乏によることが既に判明しているが、しかしそれだけでは説明のつかない部分もあった。今回、生理学研究所(生理研)は、うつ病の治療薬がグリア細胞に作用して治療効果を発揮しているという事実を新たに突き止めた。

【こちらも】長期にわたるうつ病が脳を変化させるという研究結果が発表

 研究に名を連ねているのは、山梨大学医学部薬理学講座小泉修一教授及び木下真直医員らの研究グループである。

 セロトニンやノルアドレナリンはモノアミンに分類される神経伝達物質である。既存のうつ病治療薬のほとんどは、モノアミンの欠乏状態を何らかの手段(再取込阻害など)によってで改善させることを主機能として開発されている。しかし、既存の治療薬では治療効果が出るまでに時間がかかったりする例が多い。

 理論的にいえば、再取り込阻害は本来、急性的に作用を発揮するはずである。にもかかわらず、一般にうつ病の治療薬が効果を発揮するまでには2週間から6週間程度がかかるとされている。これはいったいなぜなのか、というのが問題であった。

 さて、グリア細胞はまたの名を神経膠(しんけいこう)細胞ともいう。gliaというのは膠(にかわ)を意味する古いギリシャ語である。神経系を構成する細胞の中で、神経細胞ではないものの総称だ。その中で、今回の研究で注目されたのは「アストロサイト」というグリア細胞だ。具体的な機能についてはまだ謎が多いのだが、今回の研究では、アストロサイトの機能を阻害したマウスにおいて、うつ病治療薬の効果が減少し、逆に亢進させたマウスにおいては治療効果が高まるということが分かった。

 これまでは選択的セロトニン再取込阻害薬は神経細胞への作用のみが着目されてきたのだが、どうも神経細胞を支えるアストロサイトにも大きな影響を及ぼしているらしい、ということである。

 なお研究の詳細は、EBioMedicineのオンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事