香気成分「サフラナール」に食後中性脂肪上昇抑制作用を発見 サフランの未利用花部の有効利用や高付加価値化に期待
配信日時: 2026-09-01 14:00:00
画像 : https://newscast.jp/attachments/S99rOtqksLg0m3QQ87Dk.png
左:近畿大学薬学総合研究所機能性植物工学研究室(角谷研究室)でのサフランの室内栽培試験の様子 中央:サフランの花部 右:機能性成分として特定したサフラナールの化学構造
近畿大学薬学総合研究所/アンチエイジングセンター(大阪府東大阪市)教授/センター長 森川敏生、同教授/副センター長 角谷晃司、近畿大学共同利用センター(大阪府東大阪市)講師 丸本真輔、近畿大学大学院薬学研究科(大阪府東大阪市)薬学専攻博士後期課程2年 高田隆矢(JST-SPRINGプログラム採択)は、サフランの室内栽培・生産業を営む八世屋(大分県竹田市)との共同研究により、サフランの香気成分である「サフラナール※1」が、食後の血中中性脂肪上昇を抑制することを明らかにしました。本研究成果により、未利用部位の有効利用や収穫後の省力化など、サフラン花部の高付加価値化が期待されます。
本件に関する論文が、令和8年(2026年)8月30日(日)に、令和7年(2025年)に発刊された天然物科学に関する学術雑誌"Natural Products: Chemistry, Pharmacology and Nutrition(ナチュラルプロダクツ:ケミストリー ファーマコロジー アンド ニュートリション)"にオンライン掲載されました。
【本件のポイント】
●サフランの香気成分「サフラナール」が食後の血中中性脂肪上昇を抑制することを発見
●サフランの花・花弁・めしべの精油成分を比較分析し、「サフラナール」がめしべよりも花全体に高い割合で含まれることを解明
●本研究は、これまで十分に活用されてこなかったサフラン花部の有効利用や未利用花部を活用した機能性食品素材への応用可能性を示唆
【本件の背景】
サフラン(Crocus sativus L.)はアヤメ科に属する植物で、その花に3本あるめしべを集めて乾燥したものが、世界で最も高価な香辛料の一つとしても知られています。香辛料としてのサフランは、パエリアやサフランライス、ブイヤベースなどの料理に用いられるとともに、めしべの柱頭(紅色部分)は生薬「サフラン(バンコウカ)」として、鎮静、鎮痛、通経作用を期待して薬用にも供されます。
近畿大学薬学総合研究所の研究グループは、国内の主産地である大分県竹田市で竹田式栽培法※2 によるサフランの栽培・生産業を営む八世屋との共同研究において、サフランの室内栽培や組織培養によるクロシン※3 の効率的な産生に関する研究をすすめています。これまで、めしべ以外の部位は未利用で廃棄されることも多かったため、新たな活用法の探索が求められていました。近年、色素成分であるサフラン由来クロシン、香気成分であるサフラン由来サフラナールに、睡眠の質を向上させる機能が報告されたことから、サフランを用いた機能性表示食品が数多く販売されています。本研究では、これまで十分に解明されていなかった香気成分「サフラナール」の食事性の脂質吸収への影響について検証しました。
【本件の内容】
研究グループは、まず、マウスにオリーブ油を投与し、食後の中性脂肪血漿トリグリセリドを急激に上昇させました。次に、サフラナールを投与したところ、オリーブ油摂取後の血漿トリグリセリドの上昇が有意に抑えられました。その作用機序を解析した結果、サフラナールは脂肪分解酵素の働きは阻害せず、食物を胃から腸へ送り出す速度を遅くすることで、食後の中性脂肪の急激な上昇を抑制していることが示唆されました。
また、サフランの精油成分を分析したところ、サフラナールは、めしべの精油よりも花全体の精油に高い割合で含まれることが明らかになりました。サフラン栽培では、香辛料や生薬として利用されるめしべ以外の花弁が十分に活用されていないことから、今後、未利用部位の有効利用や収穫後の加工処理の省力化につながる可能性があります。
本研究成果により、サフラナールを含むサフランの花部は、食事由来の脂質吸収を抑制する機能性食品素材として活用できる可能性が示唆されました。
【論文掲載】
掲載誌:Natural Products: Chemistry, Pharmacology and Nutrition
(インパクトファクター:新刊雑誌のためなし)
論文名:Anti-hyperlipidemic activity of safranal and comparison of chemical composition of
essential oils from the whole flower, petal, and pistil parts of
Crocus sativus L. originating in Oita prefecture, Japan
(大分県産サフランの花・花弁・めしべ由来精油成分の比較分析および
サフラナールの血中中性脂肪上昇抑制作用)
著者 :森川敏生1,2,3,*、高田隆矢3、與儀暁乃1、長谷川暢大5、角谷晃司1,2、丸本真輔4,* *責任著者
所属 :1 近畿大学薬学総合研究所、2 近畿大学アンチエイジングセンター、
3 近畿大学大学院薬学研究科、4 近畿大学共同利用センター、5 八世屋
URL :https://www.npracademy.com/npcpn/articles?month=2026-08
【本件の詳細】
研究グループは、サフランの香気成分であるサフラナールが、マウスにおいて中性脂肪吸収抑制作用を示すことを明らかにしました。
まず、オリーブ油を負荷したマウスにサフラナールを溶かした溶液を口から投与したところ、中性脂肪である血漿トリグリセリドの上昇が有意に抑制されました。その作用機序を解析したところ、サフラナールは消化管において脂質を分解する酵素である膵リパーゼを阻害することなく、胃排出を遅延させることが確認されました。これは、消化酵素のはたらきを抑えることなく脂質の小腸への移行を緩やかにし、結果として脂質吸収を抑制することを示唆しています。これらの効果は、サフラナールの類似化合物であるβ-シクロシトラールにおいても同様に認められたことから、類似の香気成分がもつ共通の効果であることが推察され、今後の構造活性相関研究の進展が望まれます。一方で、サフランの色素成分であるクロシンやクロセチン※4 には中性脂肪吸収抑制作用が認められませんでした。
また、サフランの花・花弁・めしべに含まれる精油※5 をGC-MSにより分析した結果、サフラナールはめしべ(精油全体の16.4%)に比べ、花全体では高い割合(34.0%)で含まれることが明らかになりました。サフラン栽培では花を収穫したのち、手作業により高価なめしべのみが取り出され、香辛料や生薬として利用される一方で、花弁は十分に活用されていないのが現状です。そのため、花全体の精油にサフラナールが比較的多く含有していることを示すこの結果は、未利用部位の有効利用や収穫後の加工処理の省力化など、サフラン花部の高付加価値化に資する成果であると考えられます。食事性の脂質吸収を抑制する機能性食品素材としての詳細な作用機序の解明や、その臨床的意義を評価するためには、今後さらなる研究が必要です。
【研究者のコメント】
森川敏生(モリカワトシオ)
所属 :近畿大学薬学総合研究所、近畿大学アンチエイジングセンター
職位 :教授/センター長
学位 :博士(薬学)
コメント:本研究により、サフランの香気成分「サフラナール」に、食事性の脂質の吸収を抑制する機能性を発見しました。パエリアやサフランライス、ブイヤベースなどの料理に用いられる香辛料(食用資源)に隠された食品の三次機能(生体調節機能)を科学的に明らかにした食品薬学研究の一例となったと考えます。今後の、機能性食品素材への応用・展開をめざして研究を進めたいと考えています。
角谷晃司(カクタニコウジ)
所属 :近畿大学薬学総合研究所、近畿大学アンチエイジングセンター
職位 :教授/副センター長
学位 :博士(農学)
コメント:サフランは、約1万6千輪の花からわずか100g程度のめしべしか得られず、その収穫・加工はすべて手作業で行われることから、世界で最も高価な香辛料の一つとされています。一方で、大量に発生する花弁は利用されることなく廃棄されています。本研究により、その花弁に新たな機能性を見いだしたことは、未利用植物資源の有効活用という観点からも意義が大きく、サフラン産業の新たな価値創出につながる成果であると考えています。
丸本真輔(マルモトシンスケ)
所属 :近畿大学共同利用センター
職位 :講師
学位 :博士(工学)
コメント:サフランの花・花弁・めしべの精油成分をGC-MSを用いて比較分析したところ、それぞれに特徴的な成分組成を有することが明らかになりました。特にサフラナールが、手作業でめしべを取り出す前の花全体の精油にも比較的多く含まれることが示され、加工処理を省力化した素材に新たな価値を見いだすことができました。今後は精油成分のさらなる機能解明にも取り組みたいと考えています。
【用語解説】
※1 サフラナール:サフランの香りを特徴づける主要な香気成分の一種。サフランの品質評価指標の一つとしても用いられる。
※2 竹田式栽培法:大分県竹田市で考案されたサフランの栽培方法。球根を棚上に並べ、土や水を用いずに開花させる独自の栽培技術である。スペインやイランなどの主要生産国で行われる露地栽培とは異なり、病害虫の発生を抑えながら高品質なサフランを生産できることが特徴である。
※3 クロシン:サフランに含まれる水溶性カロテノイド色素の一種。サフラン特有の鮮やかな黄色を呈する成分であり、抗酸化作用や神経保護作用など様々な生理活性が報告されている。
※4 クロセチン:クロシンから生じるカロテノイド化合物。クロシンの糖部分が外れた構造を有し、体内に吸収されやすい成分として知られる。近年、認知機能や眼機能の維持に関する研究が進められている。
※5 精油:植物から得られる揮発性の芳香成分の混合物。花、葉、果実などに含まれ、植物特有の香りのもととなる。
【関連リンク】
薬学総合研究所 教授 森川敏生(モリカワトシオ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/823-morikawa-toshio.html
薬学総合研究所 教授 角谷晃司(カクタニコウジ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/819-kakutani-kouji.html
共同利用センター 講師 丸本真輔(マルモトシンスケ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/383-marumoto-shinsuke.html
薬学総合研究所
https://www.kindai.ac.jp/rd/research-center/prti/
アンチエイジングセンター
https://www.kindai.ac.jp/antiaging/
共同利用センター
https://www.kindai.ac.jp/rd/research-center/jrc/
詳細はこちら
プレスリリース提供元:@Press
スポンサードリンク
「学校法人近畿大学」のプレスリリース
スポンサードリンク
最新のプレスリリース
- 「ほっともっと」が発信する"食のウェブマガジン"『HOTTO LIFE magazine』玉城ティナさん9.1(火)より公開09/01 15:00
- 世界遺産「飛鳥・藤原の宮都」をめぐる定期観光バスの新コースを運行開始09/01 15:00
- 災害時の栄養不足という課題に着目アルファー食品初の機能性表示食品GABA配合の長期保存スープ「からだを想う野菜スープ+」今秋発売09/01 15:00
- 長期保存食の新商品・リニューアル品を2026年10月より順次出荷09/01 15:00
- 株式会社ACNグループ 道上嵩琉選手・道上稀唯選手とスポンサー契約を締結09/01 15:00
- 最新のプレスリリースをもっと見る
