光計測と炭素循環モデルにより土壌中の炭素貯留量を高精度に推定する技術を開発
配信日時: 2026-05-13 15:30:00
農地由来炭素貯留量評価の高精度化・省力化により、農業の生産性向上や温室効果ガスの削減に貢献
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従来技術との比較
三菱電機株式会社は、画像解析と光計測技術に、植物の「根バイオマスモデル(※1)」と微生物による「有機物分解モデル(※2)」で構成される炭素循環モデルを組み合わせることで、農地土壌における炭素貯留量を高精度に推定する技術を開発しました。本技術は、土壌中の炭素量変動の把握に必要であった大規模な土壌採取と化学的手法を用いた土壌分析を不要とし、広域土壌モニタリングの効率化・低コスト化を実現します。これにより、2026年度以降に本格稼働予定のGX-ETS(※3)にも対応可能な農地由来の炭素貯留量評価を支援するとともに、農業の生産性向上や、温室効果ガスの削減に貢献します。
政府が掲げる2050年カーボンニュートラル目標の実現に向け、グリーントランスフォーメーション(GX)推進政策や企業・自治体の排出量削減計画などの取り組みが加速する中、炭素の貯留先として農地土壌が注目を集めています。農地土壌への炭素貯留は、温室効果ガス削減だけでなく、土壌の保水性や肥沃度を高め、農作物の生育環境改善にも寄与しますが、土壌中の炭素量は、微生物による有機物分解の速度や農作物の根の成長量など、直接観測することが難しい生物・化学プロセスに大きく左右されるため、その把握には大規模な土壌採取と化学分析が不可欠でした。
当社は今回、上空から撮影したリモートセンシング画像や、地上で取得した光計測データを、農作物の根の成長や土壌代謝を示すシミュレーションモデルに入力することで、土壌中の炭素循環を動的に再現する技術を確立しました。また、北海道豊富町での初期実証実験において、本技術が従来手法に比べて大幅に精度を向上させながら、広範囲の炭素貯留量を低コストで評価できることを確認しました。本技術により、GX-ETSで必要とされるMRV(モニタリング・報告・検証)対応において、第三者検証に客観的なエビデンスとして活用可能なデータを提供し、各種報告書の作成を支援します。今後は、国内外の多様な農地での追加実証を進め、農業の生産性向上や温室効果ガスの削減に貢献します。
■開発の特長
1.土壌の光計測により、初期炭素量計測の工数削減と低コスト化を実現
・農地の特定地点で行う高精度な地上分光計測(※4)(光計測)により、土壌採取と採取した土壌の分析工程を不要とし、安価かつ短期間で初期炭素量(※5)を計測する手法を確立
2.「根バイオマスモデル」と「有機物分解モデル」を統合した「炭素循環モデル」により、土壌中の炭素増減量推定を高精度化
・上空から撮影した広域画像により取得した地表面のデータ(植生指数や水分量など)を基に、地上からは見えない根の量を推定する「根バイオマスモデル」を開発。これにより、作物が光合成により取り込んだ炭素のうち、根に蓄えられた量を評価。さらに、根の生育分布の不均一性から、農地全域における農作物の成長のばらつき(作生成長ムラ)を把握
・気象条件、土壌温度、含水率などの土壌環境データと連動し、微生物が有機物を分解してCO2を放出する過程をシミュレーションする「有機物分解モデル」を構築
・「流入(根)」と「流出(分解)」のモデルを統合した「炭素循環モデル」により、土壌に蓄積される炭素の純増減量を高精度に推定。さらに、地上分光計測の結果を用いて広域画像解析の予測値を補正することで、炭素循環モデル全体を高精度化し、広域土壌のモニタリングを短時間かつ低コストで実現
3.信頼性の高いMRVプロセスの提供により、各種報告書作成や農地管理を支援
・2026年度以降に本格運用予定のGX-ETSで必要とされるMRV(モニタリング・報告・検証)対応を見据え、第三者検証に客観的なエビデンスとして活用可能なデータを出力。サプライチェーン排出量を含む各種報告書作成を支援
・不耕起栽培や堆肥投入などの農地管理手法が、有機物分解や根の形成に与える影響を数値化。これにより、効果的な脱炭素農業の指針提供と実践加速を支援し、生産性向上に貢献
■今後の予定・将来展望
2024年度から北海道豊富町において実証試験を継続しており、2027年3月までに計測・評価を完了させる予定です。本技術をベースとした「土壌炭素モニタリングサービス」の提供に向けて、より高精度な計測技術の開発を進め、将来的には、国内外の多様な土壌や植生に本モデルを適応させることで、自然資本の価値最大化に取り組みます。また、信頼性の高い炭素データの提供を通じて、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目指します。
■三菱電機グループについて
三菱電機グループは、「Our Philosophy」のもと、サステナビリティを経営の根幹に据え、社会・顧客・株主・従業員をはじめとしたステークホルダーからの信頼を重んじてまいります。また、「収益性」「資本効率」「成長性」を追求するとともに、顧客と繋がり続けて社会課題を解決する新たな価値を創出し、企業価値の持続的向上を図ります。1921年の創業以来、100年を超える歴史を有し、社会システム、エネルギーシステム、防衛・宇宙システム、FAシステム、自動車機器、ビルシステム、空調・家電、デジタルイノベーション、半導体・デバイスといった事業を展開しています。世界に200以上のグループ会社と約15万人の従業員を擁し、2025年度の連結売上高は5兆8,947億円でした。詳細は、オフィシャルウェブサイトをご覧ください。
※1 植物の根の量や成長パターンを数値化し、土壌中の炭素や栄養分の変化を予測する計算手法
※2 土壌中の微生物による有機物の分解速度や炭素放出量を数値化する予測モデル
※3 排出量取引制度。企業が温室効果ガス排出削減目標を設定し、削減実績や排出枠・クレジットの
取引を通じて、カーボンニュートラルと経済成長の両立を図る仕組み
※4 可視-近赤外光の反射光強度から土壌の物理化学的特性を推定する技術
※5 プロジェクトや観測を開始する時点で土壌中に蓄えられている炭素量のこと
<お客様からのお問い合わせ先>
三菱電機株式会社 情報技術総合研究所
〒247-8501 神奈川県鎌倉市大船五丁目1番1号
https://www.MitsubishiElectric.co.jp/corporate/randd/inquiry/index_it.html
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