『水素は高い』の常識を覆す―余剰再エネで水素製造コストを下げ、利益に変える『蓄電池×水素』の制御技術を開発―
配信日時: 2026-05-12 10:00:00

近年、再エネの導入拡大に伴い、発電量が需要を上回ることで発生する余剰電力や出力抑制が社会課題となっています。一方、水素は脱炭素社会を支える次世代エネルギーとして期待されるものの、製造コストの高さが普及拡大の障壁となっていました。そこで再生可能エネルギーの余剰電力を有効に活用し、水素製造コストの低減と収益化を両立する『蓄電池×水素』エネルギーマネジメントシステム(BHS)を開発しました。本技術は、電力需給や電力市場価格、CO2原単位、再エネ発電量を分析・予測し、最適にグリーン水素を製造するものです。これにより、グリーン水素製造コストを実質0円/Nm3レベルまで大幅に低減可能となり、再生可能エネルギーの更なる普及と水素社会の早期実現が期待できます。
東京大学先端科学技術研究センター水素エネルギー分野の河野龍興教授の研究グループは、余剰再エネで水素製造コストを下げ、利益に変える『蓄電池×水素』の制御技術を開発しました。近年、再生可能エネルギーの大幅な導入拡大に伴って、接続する系統の安定化と余剰電力の発生が問題となっています。再エネ導入量が大きな地域では発電量が需要量を上回る時間帯に電力価格が負となる、いわゆるネガティブプライスも発生しています。一方で、グリーン水素としての要件としては、使用する電力のCO2原単位(kg-CO2/kWh)が十分に低い必要があり、ネガティブプライスと低炭素電力の時間帯は必ずしも一致しないという課題が存在していました。
本研究では、蓄電池と水電解装置を組み合わせたシステムにおいて、高精度な天候予測技術を利用し、電力価格および電力CO2排出原単位の時間変動を統合的に予測することで、水素製造装置の運転を最適化する『蓄電池×水素』エネルギーマネジメントシステム(BHS)を開発しました。これにより、環境価値を維持しながら水素製造時価格の負値化を実現することに成功し、日本政府公式広報サイト「JapanGov」1),2) にて掲載されました。また本技術の一部は、丸紅にて推進された「豪州・インドネシア間のグリーン水素製造・輸送・利活用に関する実証事業」において実用化され、欧州のグリーン水素CertifHy基準をクリアーする水素をほぼ0円/Nm3に近い価格で製造することに成功しました2)。これは、水素利用において最重要課題であるコスト削減への解決策を初めて実証したものです。
本研究成果は、グリーン水素を作るほど儲かる時代へと突入したことを示しており、水素は単なるエネルギーキャリアではなく、自国で製造可能なエネルギー媒体としての新たなパラダイムを秘めています。近い将来、再生可能エネルギーの導入量が大幅に増大し、更に蓄電池及び水電解装置の低価格化が更に進めば、グリーン水素の経済合理性を大きく改善することができ、その際に本技術は水素事業における重要な基盤となります。今後はAI技術も活用して更なる最適化統合制御のBHS研究を行っていきます。
参考文献
1) JAPAN GOV
https://www.japan.go.jp/topics/index.html
2) Driving the hydrogen society forward
https://plus.reuters.com/jco-driving-the-hydrogen-society-forward/p/1
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