ヒトのビフィズス菌BB536が高たんぱく食を摂取する男性アスリートの下痢に関連するQOLスコアの改善および体臭関連代謝物を低減する可能性が示唆
配信日時: 2026-05-08 11:00:00
~科学雑誌『Journal of the International Society of Sports Nutrition』掲載~
森永乳業と順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の町田修一教授、順天堂東京江東高齢者医療センターの浅岡大介教授らは共同研究により、高たんぱく食を摂取する男性アスリートを対象に、ヒト常在性ビフィズス菌種であるBifidobacterium longum BB536を摂取することによる影響を検証しました。その結果、下痢に関連するQOL(Quality of Life)スコアの改善や、体臭関連代謝物を低減する可能性などが示唆されました。なお、本研究成果は、科学雑誌『Journal of the International Society of Sports Nutrition』に2026年4月28日に掲載されました。
本研究成果のポイント
●ビフィズス菌BB536の摂取により、下痢関連QOLスコアが改善傾向を示した。
●下痢関連QOLスコアが改善した被験者の腸内細菌叢における、酪酸産生菌Faecalibacteriumの占有率が増加した。
●ビフィズス菌BB536の“体臭関連代謝物”への影響は、腸内細菌タイプ(エンテロタイプ※1)に依存する可能性が示唆された。
●一部のエンテロタイプでは、高たんぱく食を摂取するアスリートにおける体臭関連代謝物を低減する作用が示唆された。
1. 研究背景
アスリートは筋肉の回復・成長のため高たんぱく食を摂ることが多い一方、過剰摂取による腸内環境の乱れや消化器症状、体臭の原因となる代謝物増加が懸念されています。プロバイオティクスは腸内環境改善作用が知られていますが、これまで高たんぱく食を摂取するアスリートを対象とした研究は限られていました。そこで、森永乳業が50年以上にわたり研究を行っているビフィズス菌BB536を摂取することによる影響を探索的に検証しました。
2.研究方法
順天堂大学運動部に所属する健康な男性アスリート60名を対象に、ビフィズス菌BB536を含むカプセルまたはプラセボカプセルを4週間摂取いただき、さらに両群ともにホエイプロテイン70g/日を併用するランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を実施しました。消化器症状(出雲スケール※2)、腸内細菌叢(16S rRNA解析)、体臭関連代謝物(皮膚ガス※3測定)を評価しました。
3.研究結果
1.消化器症状について:ビフィズス菌BB536の摂取により、下痢関連QOLスコアが改善傾向
ビフィズス菌BB536摂取群とプラセボ摂取群で群間差は確認されなかったものの、ビフィズス菌BB536摂取群では、摂取4週間後に下痢に関連するQOLスコアが有意に改善しました(図1)。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/21580/1461/21580-1461-1cc30dc9adae5c14089a8c6a133229ed-435x314.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1:下痢関連QOLスコアの変化
下痢関連QOLスコアは出雲スケールの下痢症状に関する3項目の合計点として算出した(0~15点)。
(BB536群:n = 29, プラセボ群:n = 30)
(*:p < 0.05 Wilcoxon符号付き順位検定による統計的有意差を示す)
2.腸内細菌叢について:下痢関連QOLスコアが改善した被験者の腸内細菌叢における、酪酸産生菌Faecalibacteriumの占有率が増加
下痢関連QOLスコアが改善した被験者(レスポンダー)では、ビフィズス菌BB536摂取4週間後に抗炎症作用を持つ酪酸産生菌である Faecalibacterium の腸内細菌占有率が、ノンレスポンダーより有意に増加し(図2)、ビフィズス菌BB536による1.の改善効果が腸内細菌叢に依存する可能性が示唆されました。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/21580/1461/21580-1461-8d185c97bcbdc364ce55bb126d6229a5-482x345.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2:レスポンダー・ノンレスポンダーにおける酪酸産生菌Faecalibacteriumの腸内細菌占有率の変化
BB536摂取群をレスポンダー(n = 9)とノンレスポンダー(n = 19)にわけ、摂取前後における腸内Faecalibacteriumの占有率を算出した。(*:q < 0.05 ノンパラメトリック共分散分析による多重性を考慮した統計的有意差を示す)
3.ビフィズス菌BB536の体臭関連代謝物への影響は、腸内細菌タイプ(エンテロタイプ)に依存する可能性が示唆
被験者の腸内細菌叢の違いによる、ビフィズス菌BB536の体臭関連代謝物への影響を明らかにするために、摂取前の腸内細菌叢に基づき被験者を以下の2つのエンテロタイプに分類しました。
・R型:Ruminococcus 優勢型(ビフィズス菌BB536群:n = 8、プラセボ群:n = 10)
・F型:Faecalibacterium 優勢型(ビフィズス菌BB536群:n = 21、プラセボ群:n = 20)
いずれのエンテロタイプにおいても、体臭関連代謝物はビフィズス菌BB536摂取群とプラセボ摂取群で群間差は確認されなかったものの、R型ではビフィズス菌BB536摂取により、プロピオン酸が増加傾向、酪酸が有意に増加しました。一方、F型ではアンモニアが減少傾向、メチルメルカプタンが有意に減少しました(図3)。
以上より、ビフィズス菌BB536の体臭関連代謝物への影響はエンテロタイプに依存する可能性があり、特にF型では高たんぱく食を摂取するアスリートにおける体臭関連代謝物の低減作用が示唆されました。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/21580/1461/21580-1461-89fa0a1dd1acd600bb57b5f9731da390-676x434.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図3:ビフィズス菌BB536摂取によるエンテロタイプごとの代謝産物の変化
BB536摂取群をR型、F型に分け、摂取前後の体臭関連代謝物を測定した。
(*:p < 0.05、#:p < 0.1 Wilcoxon符号付き順位検定による統計的有意差を示す)
4. 今後の展望
本研究結果は、アスリート特有の食生活環境において、腸内環境の違いに基づく個別化栄養アプローチの可能性を示唆するものと考えられます。本研究は探索的試験であり、今後さらなる検証を行い、アスリートの健康維持およびQOL向上に向けたプロバイオティクスの研究開発を進めてまいります。
※1 エンテロタイプ
エンテロタイプとは、腸内細菌叢の構成パターンを分類する概念です。個人の食事や生活習慣を反映しており、長期的な食生活の傾向と関連しているとされています。
※2 出雲スケール
出雲スケールは、胸やけ、胃痛、胃もたれ、便秘、下痢という、上部から下部にわたる5つの消化器症状を総合的に評価する合計15項目からなる自己記入式質問票です。各項目は「全く困らなかった(0点)」から「がまんできないくらい困った(5点)」までの6段階で評価されます。消化器症状(3項目)ごとのQOLスコアは0~15点の範囲で算出され、数値が高いほど日常生活への障害が大きいことを示します。
※3 皮膚ガス
皮膚ガスとは、皮膚から自然に放出される微量の揮発性物質で、体臭の一因となります。人は皮膚からも多数の化学物質を放出しており、近年、腸内細菌由来の代謝物が血流を介して皮膚から放出されることが明らかになってきました。そのため、腸内環境の変化が皮膚ガスやにおい成分に反映される可能性があります。
論文名:Bifidobacterium longum BB536 is associated with improvements in gastrointestinal symptoms and odor-related metabolites in microbiota-defined subgroups of male athletes consuming a high-protein diet: exploratory randomized double‑blind placebo‑controlled trial
著者名:Shu Miyamoto1, Shin Yoshimoto1, Noriko Katsumata1, Natsumi Mutoh1, Noriyuki Iwabuchi1, Toshitaka Odamaki1, Daisuke Asaoka2, Shuichi Machida3
(1:森永乳業研究本部バイオティクス研究所、2:順天堂東京江東高齢者医療センター、3:順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科)
雑誌名:Journal of the International Society of Sports Nutrition (2026)
(DOI: https://doi.org/10.1080/15502783.2026.2664664)
<参考情報>
ヒトの腸内に生息するビフィズス菌(Human-Residential Bifidobacteria; HRB)
ビフィズス菌は、現在までに100種類以上発見されています。しかし、ヒトの腸内にすむビフィズス菌とヒト以外にすむビフィズス菌では、基本的に種類が異なります。森永乳業は特にヒトの腸内にすむビフィズス菌にこだわって研究開発を行っています。
また森永乳業は、ビフィズス菌の中でもヒトの腸管に特徴的に生息する種を「ヒト常在性ビフィズス菌(Human-Residential Bifidobacteria、HRB)」と命名しました。ヒトの腸内にすむビフィズス菌は、1500万年以上にわたり、ヒトの祖先と共に進化を遂げてきたことが示唆されています。こうした長い共進化の過程は、HRBがヒトの健康にとって極めて重要な役割を担ってきたことを示す一つの証拠だと考えています。
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