台湾・屏東県と川崎市が「子どもの遊び政策」で日台交流
配信日時: 2026-05-08 08:00:00
遊ぶ権利の保障は、子どもが幸せに育つ社会への投資
一般社団法人TOKYO PLAY(代表理事:嶋村仁志、東京都渋谷区)は、2026年4月20日~25日の日程で台湾から来日した屏東県社会処職員および子どもの遊び環境づくりを推進する民間団体「Beyond Playmaking」ら23名の視察団を川崎市子ども夢パークに招き、川崎市職員との交流セッションをコーディネートしました。
この交流は、2019年より「遊びの首都」を掲げ、県全体で子どもが遊ぶ環境づくりに取り組む台湾・屏東県と、日本初の子どもの権利条例の理念の元でつくられた冒険遊び場(プレーパーク)とフリースペースが併設された施設を持つ川崎市という、東アジアでも最先端の実践が出会う機会となりました。
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■ 遊びの首都としての屏東県
台湾最南端に位置する屏東県は、「子どもの遊ぶ権利」はオプション的な余暇ではなく、 食事・睡眠・呼吸と同じように重要な基本的な生存の権利として、「遊びの首都」というブランドを掲げ、県全体で子どもが遊ぶ環境の整備に取り組む先進的な地方自治体です。
その背景にあったのは、「ソーシャルワークの重大な保護事案に対処するには、事後対応だけでなく、乳幼児期からの予防が必要」という視点でした。
屏東県では、10年以上前から「すべての新規公園の設計時に子どもに声を聴くワークショップ実施」を義務化したほか、県内各地で年14回の遊びイベントの開催、僻地や離島にも自由に遊ぶことの大切さを啓発する移動式遊び場が展開されています。近年では、「県庁をジャック」と銘打った、子どもたちと県庁職員が創る遊びのイベントが開催されています。
■ 視察団の背景
今回の視察団は、子どもに関する公共政策や、子ども食堂、冒険遊び場など子どもたちの自由な遊びと福祉を支える先進的な実践を学ぶため、屛東県社会処(社会福祉部門)、県知事秘書室、屛東科技大学助教授、屏東県の遊びの環境整備を支えてきたBeyond Playmakingら23名のメンバーで構成されています。Beyond Playmakingは、子どもの視点を大切にし、遊びを軸にして子どもがエンパワーされる社会の実現を目指す2014年に設立された専門家集団の社団法人です。前身は、台湾で均一化されてしまった公園のデザインを変えていくために立ち上がった保護者グループでした。
TOKYO PLAYは、Beyond Playmaking代表の李玉華氏と2018年から国際会議やプロジェクト視察を通じた交流があり、2024年にはTOKYO PLAYが台湾・新北市に招聘され、今回の交流場所となった川崎市子ども夢パークを舞台とした映画「ゆめパの時間」の台湾初上映にもつながりました。
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川崎市子ども夢パークを見学
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映画「ゆめパの時間」の舞台
■ 当日の交流セッション
午前は、川崎市子ども夢パークを運営するNPO法人フリースペースたまりば理事長・西野博之氏によって、川崎市が日本で初めて採択した子どもの権利条例を元に生まれた施設の経緯や、不登校の子どもたちを受け入れるフリースペース「えん」、自由に遊べる常設の冒険遊び場(プレーパーク)の説明がありました。その後、園内を回り、音楽スタジオや手作り遊具、泥のエリアなど、乳幼児から中高生までに向けた幅広い遊び環境に感嘆の声が上がりました。
午後はセッション形式で行われ、TOKYO PLAYによる日本の遊び環境の現状紹介、川崎市職員による取り組み紹介、そして屏東県側からの活動報告へと続きました。
TOKYO PLAYからは、2023年に制作した緊急政策提言(遊びのマニフェスト)を紹介。川崎市子ども夢パークの充実した環境のすばらしさとは対照的に、「遊びの空間量は、自然の場所で1/1000に減少」「78%の子が平日に外遊びをしない」といったデータに見られるように、日本国内全般では子どもが遊ぶ環境が貧困化している現状を共有しました。
川崎市からは、子どもの権利条例に基づいた子ども会議や、市内各地にある子ども文化センターの取り組みが紹介されました。
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川崎市子ども夢パークのプレーパークエリア遊具
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TOKYO PLAY嶋村より「遊びのマニフェスト」を紹介
■ 子どもを公共政策の主役に。屏東県の挑戦
子どもの遊ぶ権利を「食事や睡眠と同じ基本的な生存権として位置づける」という屏東県の姿勢は、子どもの権利条例の制定が広がる日本の地方自治体の政策関係者への示唆に富むものでしたが、さらにその先には日本ではまだ例を見ない実践がありました。
2025年に開催された「県庁をジャック!子どもが主役」は、県庁舎を使った遊びのイベントです。この発想は、大人側から一方的に提案されたものではなく、むしろ子どもたちの声を聴く取り組みの中から生まれたとのこと。それは、子どもたちや子育て世帯が県庁や県政に親しめるようにするには、県庁舎を遊び場にしては?という声から生まれた発想でした。
イベントは、屏東県庁の全24部署の職員が自ら協働し、それぞれの施策を子どもにも分かるようにゲームで体験してもらうという手づくりの内容にこだわったとのこと。子どもたちや親子からは「県庁舎や県職員がとても身近な存在になった」という感想が聞かれた一方で、県職員にとっては「誰にとっての何のための政策か」を自省する機会となったようです。そして、人気のブースを子どもたちが投票するしくみは、その後に「子どもからの県政への提案→トップ3を政策として実行」という枠組みに発展し、「遊び」を媒介として主権者教育・民主主義教育のプロセスを県全体で構築するという取り組みにもつながっていました。
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2025年に開催された「県庁をジャック!子どもが主役」
■ TOKYO PLAY代表・嶋村 仁志のコメント
今回の交流を経て、「イベントではなく、日々の取り組みをソフトから支える」という日本側の取り組みと、日本ではまだ例を見ない「遊びを軸に行政のイニシアチブでダイナミックに政策を展開していく」という台湾側の取り組みのよいところが双方に大きな刺激となりました。
国連子どもの権利条約第31条にある「遊ぶ権利」は、長らく「忘れられた権利」として扱われてきました。しかしながら、遊ぶことは人の本能として身体的・精神的・社会的ウェルビーイングを確保する「いのちのしくみ」です。遊ぶ権利は、子どもの公衆衛生の土台として、活気あるまちづくりの一環として、社会への主体的な参画を促す主権者教育の入り口として、子どもと社会に密接につながっています。
この交流期間中には、来年度以降に屏東県にTOKYO PLAYが招待される企画も生まれました。今後、「子どもの権利」「子どもの参画」「子どもの声を聴く」というテーマで日台の行政間交流、実践交流が生まれていくことが期待されます。
2024年、子どもが遊ぶことの大切さを啓発する日として、「国際遊びの日(International Day of Play)」が国連総会で全会一致で採択されました。3年目となる今年は、TOKYO PLAYも含め、日本でもIPA日本支部を中心に昨年度以上に大きなキャンペーンを展開していく予定です。
■ こどもの日に寄せて
台湾・屏東県の10年の経験が示すのは、子どもが遊ぶ環境の整備に自治体が本気で投資したとき、社会がどう変わるかという未来予想図です。
遊ぶ権利の保障は、子どもが幸せに育つ社会への投資。
その確信を胸に、TOKYO PLAYはこの経験を日本社会に届けます。
【関連リンク】
遊びのマニフェスト(TOKYO PLAY):https://tokyoplay.jp/2023/03/manifest-20230329/
国際遊びの日2026(IPA日本支部):https://www.ipajapan.org/DAY-OF-PLAY
Beyond Playmaking:https://www.facebook.com/BPBeyondPlaymaking/
【一般社団法人TOKYO PLAYについて】
「Play Friendly Tokyo~子どもの遊びにやさしい東京を~」をビジョンに活動する中間支援組織。子どもに関わる大人の人材育成、みちあそび推進、子どもの声を聴く事業、調査研究など、遊ぶ権利の実現に向けた多様な事業を展開。
公式サイト:https://tokyoplay.jp
お問い合わせ:info@tokyoplay.jp
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