【芥川賞候補作決定】ある家に暮らしていた三代の住人たちの記憶を紡ぐ感動作・鳥山まこと『時の家』
配信日時: 2025-12-11 11:00:00
いしいしんじ氏・松永K三蔵氏推薦!野間文芸新人賞受賞作
ここで暮らしていた人々の存在の証を、ただ、描きとめておきたい。鳥山まこと「時の家」(「群像」2025年8月号掲載、単行本も発売中)が第174回芥川賞候補作に決定しました。選考会は1月14日に開催されます。
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「群像」2025年8月号
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鳥山まこと『時の家』
著者の鳥山さんは2023年に「あるもの」で第29回三田文學新人賞を受賞し、建築士の仕事をしながら小説家としてデビューしました。本作がはじめての単行本ですが、「群像」掲載時からその傑出した完成度が話題を呼び、第47回野間文芸新人賞を受賞しています。
ある家に暮らしていた三代の住人たちの人生が、「訪問者」である青年のスケッチによって呼び起こされていく本作。建築士である初代の住人・藪さんが魂を込めて設計した家はすみずみまで美しく、丸柱や天井、漆喰の壁といった細部には、住人たちの記憶と感情が宿ります。彼らが笑い、悲しみ、愛した時間が壮大なスケールでよみがえる、切なくもあたたかい感動作です。
本作執筆の経緯を綴ったエッセイ(「群像」2025年12月号掲載)には、鳥山さんがおなじく建築士である妻と一緒に自宅を設計し、現場に通っていたときのエピソードが綴られています。『時の家』を書き始めたきっかけは、まだ完成していないこの家にすでに「あらゆる景色」が内包されているのではないか、と感じたことでした。
こぢんまりした一軒家である。しかし建ち上がる前にもうすでにこれほど輝く瞬間が染み込んでいる。それらは現場工程の中で次々に埋もれて見えなくなってゆく。誰がこのことを知っているのだろうか。誰がこの家の記憶を覚えておくことができるのだろうか。どのようにすれば残しておけるのだろうか。
いまもっとも注目されている新人作家が真心を込めて書き上げた、ある家と記憶のかけがえのない物語。単行本も好評発売中です。
■作品紹介
芥川賞候補作&野間文芸新人賞受賞作!青年は描く。その家の床を、柱を、天井を、タイルを、壁を、そこに刻まれた記憶を。目を凝らせば無数の細部が浮かび、手をかざせば塗り重ねられた厚みが胸を突く。幾層にも重なる存在の名残りを愛おしむように編み上げた、新鋭による飛躍作。
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■著者コメント
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[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/1719/7979/1719-7979-d03055b2fe0bdde9b9a3e553cd99dd2c-970x600.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]・139ページとは思えない文字数と、読後感。語り手が人間ではない方が、感情が動くのかもしれない。のめり込むのかもしれない。ミステリじゃないのに、何度も読み返したいしなにより自分の大切な人に読んでもらいたいと思った。読書が好きではなくても、ぜひ読んでもらいたいと思ったのは初めてかもしれない。
・家の歴史とともに家族の思い出があり、木材の匂いや人の気配、時間の経過が描写から感じ取れる。滑らかな文章で、シームレスに視点と時点が切り替わってシンクロする。「時の幹」の描写がとても美しい純文学作品である。
・家に関する描写はとても緻密で、一番力が入っていると思いました。建築用語は身近な言葉ではないので少し難しいですが、現場で実際に使われているような言葉で書かれていることに作者の真剣さを感じました。家という存在に真正面から向き合った小説だと思います。
・手を伸ばせば届きそうな距離に家と人の息遣いが感じられる、静謐を湛えた建築文学。会わない事と会えない事、過去と思い出と記憶、同じようで同じではないあれこれを沢山考えさせられた。
・どこからともなく語り手が絶えず語りかける。140P弱とは思えないほどの圧倒的な濃密な人間関係と、漆喰のように塗り重ねながら記憶が吐き出されていくようだった。一文でも読み飛ばしてしまえば、私はこの物語に置いていかれてしまう。そんな気がしてゆっくり時間をかけて読んでいた。
・語られる震災の記憶、コロナ禍のこと、家族との記憶。忘れていることや知らない世代がいること。思い違いをしていること。人が出会い思いが交差しても、同じ道をたどることはない。「そもそも死んでしまったことと長く会えないことって、どう違うんやろ」この言葉を忘れることはないと思う。私も長く会えない人を思い出した時、同じように感じたことがあるからだと思う。
(*NetGalleyに寄せられたコメントより抜粋)
■著者プロフィール
[画像5: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/1719/7979/1719-7979-50aea6268d053f30f73fa661a568a44b-598x762.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]鳥山まこと氏(撮影/渡辺充俊)
鳥山まこと(とりやま・まこと)1992年兵庫県宝塚市生まれ。2023年「あるもの」で第29回三田文學新人賞を受賞。2025年「時の家」で第47回野間文芸新人賞を受賞。建築士でありながら、作家として執筆活動をしている。ほかの作品に「欲求アレルギー」(「三田文學」2024年春季号掲載)、「アウトライン」(「群像」2024年11月号掲載)などがある。
■書籍情報
鳥山まこと『時の家』【発売日】2025年10月23日
【仕様】四六判上製・144ページ
【出版社】講談社
【定価】2,090円
【装幀】水戸部 功
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