嫌悪体験が将来の学習ルールを調節する脳内神経メカニズムを解明
配信日時: 2025-07-07 16:06:14

〜PTSDなどの治療法開発の新たな手がかりに〜
東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床医学研究所の遠山卓研究員と渡部文子教授らは、名古屋大学大学院医学系研究科の本田直樹教授らと共同で、恐怖などの嫌悪体験が脳内の学習ルールをどのように変化させるかを明らかにしました。
本研究では、脳幹の外側腕傍核(PB)から扁桃体中心核(CeA)へと至る経路に注目しました。マウスを用いた行動・生理学的解析および数理モデルを用いた解析によって、この経路が、経験に応じてシナプス可塑性を介してネガティブな情動価(嫌悪の強さ)を増強させることで、将来の学習ルールに影響を及ぼすことを実証しました。この成果は、情動価の調節という観点から、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患の新たな治療法開発につながると期待されます。
本研究成果は、2025年7月4日に国際科学誌「Communications Biology」に掲載されました。
【研究成果、ポイント】
光遺伝学による可塑性操作技術の開発:PB–CeA経路のシナプス可塑性を光で操作する技術を開発し、in vivoで経路特異的なシナプス増強を人工的に誘導することに成功しました。
情動価変容の定量化手法の確立:Rescorla–Wagnerモデルを応用した数理学的解析により、経験に応じたネガティブな情動価の変容を検出することに成功しました。
経路特異的なシナプス可塑性と学習ルールとの因果関係を実証:PB–CeA経路のシナプス増強が情動価変容を介して、将来の学習ルールの変容との因果関係を明らかにしました。
【論文情報】
論文タイトル:Aversive experiences induce valence plasticity of instructive signals to change future learning rules in mice
著者:遠山卓1, 永嶋宇1, 東野伊織2,4, 有馬史子1, 日吉加菜映1, 永瀬将志1, 矢田祐一郎2, 本田直樹2,3,4,5, 渡部文子1*(*責任著者)
1. 東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 臨床医学研究所、2. 名古屋大学大学院 医学系研究科
3. 名古屋大学 One Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点、
4. 広島大学大学院 統合生命科学研究科、5. 自然科学研究機構 生命創成探究センター
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)Brain/MINDS 1.0、AMED脳神経科学統合プログラム(個別重点研究課題)領域2「シナプス可塑性による情動価変容と共感性制御のダイナミクス解明(24wm0625208)」(研究代表者 渡部文子)、JST(Moonshot R and D)および日本学術振興会科学研究費の支援を受けたものです。
本件に関するお問合わせ先
学校法人慈恵大学 広報課
メール:koho@jikei.ac.jp
電話:03-5400-1280
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