生物多様性と海洋の炭素隔離に強い関連 423研究を統合分析

2026年10月9日 16:06

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記事提供元:Tech Times

(Tom Fisk/pexels.com)

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生物多様性と海洋の炭素隔離には、調査対象の生態系サービス・機能の中で最も強い正の関連が見られた。ただし、この項目の評価に使われたデータセットは7件で、研究チームは慎重な解釈と調査の拡充を求めている。10月19日にアルメニアのエレバンで始まる生物多様性条約第17回締約国会議(COP17)を前に、海洋の多様性を保つ意義を示す結果となった。

■423研究が示す生物多様性の役割

キングス・カレッジ・ロンドンなどの研究チームは、陸域、淡水域、海洋、河口域を対象とする423本の研究を統合した。分析には22万2829件のデータポイントと1959件のデータセットを用い、送粉、水質の調整、炭素隔離、生物的害虫防除など、23区分の生態系サービス・機能を調べた。成果は10月6日付で学術誌「Nature Ecology & Evolution」に掲載された。

同じ働きを担う種が複数いれば、一部の種を失っても機能を補えるという考え方を「機能的冗長性」という。研究では、生物多様性が高まるにつれて働きも増す関係が多く見られた。一方で、その関係の強さや形はサービスの種類、測定方法、生態系によって異なった。

論文の図の説明では、23区分のうち11区分は増加が次第に頭打ちになる二次曲線型、10区分は直線型、2区分は対数型に最もよく当てはまった。研究で観測された多様性の範囲では、効果が頭打ちになる水準に達した例は少ない。研究を率いたエマ・モフェット氏はキングス・カレッジ・ロンドンの発表で、種が失われても生態系には十分な代替能力があるという想定を、今回の結果は問い直すものだと述べた。

■海洋の炭素隔離、効果量は最大

研究チームは、異なる形の関係を比較するため、各データセットの相関係数をフィッシャーのZ変換で共通の尺度にそろえた。海洋の炭素隔離の効果量は1.48で、対象区分の中で最も大きかった。大気質の調整はマイナス0.03と、ゼロに近い値だった。

海洋の炭素隔離に分類されたデータセットは7件で、陸域の炭素隔離の154件より少ない。最大の効果量という結果も、このデータ数を踏まえて読む必要がある。モフェット氏は大学の発表で、海洋の結果は調査対象の中で最も強い反応を示した一方、研究が少ない分野の一つでもあると指摘した。

海洋では、植物プランクトンが表層の海水に溶けた二酸化炭素を光合成で有機物に変える。その一部は動物プランクトンなどに取り込まれ、死骸やふん粒、マリンスノーとなった有機物は深い海へ運ばれる。こうした炭素の輸送は「生物ポンプ」と呼ばれ、深海に達した炭素の一部は長期間、大気から隔てられる。

生物ポンプの働きには、植物プランクトンの群集組成や微生物の食物網、有機物が深海まで届く過程が関わる。論文は、海洋の炭素循環と生物多様性に見られた強い関連を、こうした過程から説明し得ると考察している。海洋保全を気候対策に結び付ける際にも、生息地の面積とともに、その中の生物群集に目を向けることが重要になる。

■生態系によって異なる「頭打ち」の水準

増加が頭打ちになる型の関係について、研究チームはその水準に達する種数を比較した。中央値は淡水域で約4種、陸域で約14種、海洋で約23種だった。ばらつきの指標である中央値絶対偏差は、それぞれ2種、9種、17種で、生態系内にも幅がある。

論文は、海洋で中央値が高い背景として、食物網の複雑さや種間の相互作用などを挙げる。一方、淡水域には比較的少ない種数で頭打ちになる例もある。種数だけで保全の効果を一律に判断せず、対象とする生態系や働きを確かめる必要がある。

分析では、測定する空間の単位が大きいほど、生物多様性の効果が全体として強く見える傾向もあった。研究チームは、地点ごとの種組成の入れ替わりを表す「ベータ多様性」が、その一因になり得ると考えている。ただし、災害の緩和、純一次生産、バイオマス回転率では、空間の単位が大きくなるほど効果が弱まる傾向が見られた。

■災害の緩和を担う種と、周囲の群集

洪水や高潮、侵食などの災害を和らげる働きは、今回の分析では生物多様性との関連が全体として弱かった。論文は、砂丘を安定させる植物のように、特定の働きを担う少数の基盤種が結果を左右する場合を挙げている。

その基盤種が存続する環境には、周囲の生物群集も関わる。研究チームは、多様性全体の維持と、機能的に重要な種の保護を併せて考える必要があると指摘した。どの働きを守るかによって、保全の対象や管理方法も変わる。

■害虫防除の将来予測とCOP17

研究チームは、生物多様性の予測値と今回の分析結果を組み合わせ、作物の害虫を捕食者などが抑える働きも試算した。指標には、天敵と害虫の比率を用いた。化石燃料への依存が大きい社会経済経路「SSP5」では、中道的な「SSP2」に比べ、この比率が北米、南米、アジアで低下すると予測された。

国別の分析では、人口増加が速い国や、人間開発指数が低い国ほど、害虫を抑える働きの低下が大きくなる傾向が示された。この予測は将来の生物多様性の変化を用いたもので、どの種が失われるかまでは反映していない。農業への影響をより詳しく見積もるには、種ごとの役割も調べる必要がある。

COP17では、2022年に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」について、締約国全体の進捗を初めて検証する。同枠組の目標3は、2030年までに陸域・内陸水域と沿岸・海域のそれぞれ少なくとも30%を、効果的に保全・管理することを掲げる。目標19には、2030年までに生物多様性に関する資金を全ての資金源から年間少なくとも2000億ドル動員する目標も含まれる。

今回の研究は、保護する面積に加えて、生態系が担う働きや、それを支える種と群集を考える材料になる。研究チームは、分析用のデータとコードをZenodoで公開している。

元記事: Marine Biodiversity Drives Ocean Carbon More Than Any Service: Just Seven Datasets

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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