「スティール・ボール・ラン」悪魔の手のひらと回転を、地磁気・生体情報・黄金比から読み解く

2026年9月18日 02:17

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記事提供元:Tech Times

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アニメ「スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険」の2nd&3rd STAGEが、2026年9月25日からNetflixで毎週金曜日に世界独占先行配信される。全11話で、ジョニィ・ジョースターとジャイロ・ツェペリは「悪魔の手のひら」と恐れられる砂漠地帯へ進む。

羅針盤を惑わせる土地、長い年月を超えて残る聖人の遺体、黄金比を手掛かりとする回転。これらの設定には、現実の地磁気研究、生体情報の保存、数学や生物の形態形成を連想させる要素がある。作品の出来事を現実の科学で説明するのではなく、両者に通じる発想をたどることで、物語や映像表現を読み解く補助線が見えてくる。

■悪魔の手のひらと地磁気異常

公式サイトによると、2nd&3rd STAGEでジョニィとジャイロが挑むのは、総距離約750マイルの砂漠越えだ。その砂漠には「悪魔の手のひら」と呼ばれる土地があり、不穏な事件を通じて、二人はレースが単なる競技ではないことを思い知らされる。

原作に登場する悪魔の手のひらは、地形が変化し、方角をつかみにくい危険地帯として描かれる。聖人の遺体の一部が存在し、そこを通過した者の身体や能力にも変化をもたらす、物語上の重要な場所である。

このうち、羅針盤が安定した方角を示さなくなるというイメージには、岩石が作る局所的な磁場を重ねられる。地球の岩石には、含まれる磁性鉱物や形成時の環境によって磁化を記録するものがある。地下の岩体や鉱物の分布が周囲と異なれば、地球全体の磁場に局所的なずれが加わり、地磁気異常として観測される。

隕石衝突によって形成された構造でも、衝撃による岩石の移動や破砕、加熱、溶融、冷却などが岩石の磁気的性質を変えることがある。衝撃で従来の磁化が弱まる場合もあれば、溶けた岩石が冷える過程で新たな磁化を獲得する場合もある。その結果として生じる磁気異常は、地下構造や衝突の履歴を調べる手掛かりになる。

インドのダーラ衝突構造を調べた研究でも、衝撃を受けて破砕された岩石の磁化が弱く不安定になる現象が報告されている。研究対象は悪魔の手のひらのように移動する砂漠ではないが、強い地質学的事件によって岩石内部の磁気記録が乱されるという点で、作中の環境をイメージする助けになる。

アリゾナ州には、フラッグスタッフの東約60kmにメテオ・クレーターがある。約5万年前の鉄・ニッケル質の天体衝突で形成された、直径約1.2kmの衝突クレーターだ。悪魔の手のひらの直接のモデルだと確認された場所ではないものの、アリゾナの大地に残る衝突の痕跡は、宇宙から来た物体が土地の性質を変えるという作品のイメージと響き合う。

悪魔の手のひらでは、磁気だけでなく、砂による地形の変化や聖人の遺体がもたらす作用が一体となって脅威を形づくる。現実の地磁気異常との共通点は、土地そのものが目に見えない情報を持ち、そこに入った者の判断や行動を左右するという構造にある。

■聖人の遺体と、物質に残る情報

聖人の遺体は、物語の宗教的なイメージと能力の起源を結びつける存在だ。北米各地に分かれて存在する遺体の部位は、接触した人物や周囲の土地に作用し、レースに別の目的が隠されていることを浮かび上がらせる。

この設定を考えるうえでは、カトリックにおける聖遺物の伝統が手掛かりになる。聖人の身体の一部などは第一級聖遺物に分類され、信仰上の崇敬の対象とされてきた。1563年のトリエント公会議も、聖人の遺骸を崇敬する伝統を確認している。

作品は、聖なる人物の身体が死後も特別な意味を持つという宗教的発想を、物質が具体的な作用を生む物語へ展開している。これは教義を自然科学の理論に置き換えたものではなく、精神的な意味が身体という物質に宿るというイメージを、能力や土地の変化として可視化したものと読める。

現実の生命科学でも、生物由来の物質が過去の情報を残すことがある。古代DNA研究では、骨や歯などに残ったDNA断片を分析し、古い生物の遺伝的特徴や集団の移動を調べる。保存状態は温度、水分、微生物、時間などに大きく左右されるが、有機物が長期間にわたって生物学的情報の一部を保持し得ることを示す研究分野である。

エピジェネティクスも、DNAの塩基配列だけが生物の状態を伝える情報ではないことを示している。DNAの化学修飾などが遺伝子の働き方に関係し、一部の変化については細胞分裂や世代を越えた継承が研究されている。一方、環境による変化がどの程度、どの条件で世代を越えるかは生物種や現象によって異なる。

こうした研究との共通点は、古い組織が周囲へ特殊な力を放つという機構ではなく、物質が過去の履歴を情報として保持するという発想にある。聖人の遺体は、身体を単なる遺物ではなく、人物の存在や物語を現在へ接続する媒体として描いている。

分散した遺体の部位が各地で異なる出来事を引き起こす構成も重要だ。一つ一つの部位には局所的な意味がありながら、それらを集める行為が大陸規模のレースと政治的な思惑を結びつける。断片が全体像を形づくるという構造が、物語を前へ動かしている。

■黄金比と回転の共通構造

ジャイロが用いる「回転」は、鉄球を回転させて操るツェペリ家の技術だ。その発展には黄金長方形や黄金比が関係し、自然物や馬の動きから理想的な回転を読み取るという発想が描かれる。

黄金比φは、約1.618となる数学上の比率である。フィボナッチ数列では、隣り合う項の比が次第に黄金比へ近づく。植物の葉や種子の配置を表すモデルでも、フィボナッチ数や黄金角に関係するパターンが現れる場合がある。

ただし、黄金比を自然界のあらゆる形に当てはまる普遍的な法則とみなすことはできない。ヒマワリなどの配列には数学的な規則性が見られるものの、生物の形は成長過程、物理的制約、遺伝的要因、環境などが組み合わさって形成される。オウムガイの殻も対数らせんに近い形を描くが、その比率が必ず黄金比になるわけではない。

2018年に発表された自己複製システムの数理研究も、黄金比を生物学における特別な普遍定数とみなす考えに疑問を示した。数理モデルによっては黄金比が現れるものの、別の代数的な比率も生じ、黄金比への収束は理想化された条件に依存するという内容だ。

この知見から、馬の自然なギャロップが必ず黄金比を生み出すとはいえない。それでも、ジャイロが周囲の形や動きを観察し、そこから最も調和した回転を引き出そうとする姿勢には、自然のパターンを数学で読み取るという発想を重ねられる。

回転の力は、単に黄金比という数値を使えば得られるものではない。鉄球の形、投げ方、身体の動き、対象との距離、馬との連携など、複数の条件をそろえる技術として描かれる。使用者の観察と訓練によって出力が変わるインターフェースという点が、回転を特徴的な能力にしている。

作中で回転が特別な力へ発展する過程には、自然界に見られる規則を理解し、身体技法へ変換するという一貫した構造がある。黄金比の科学的な位置づけ以上に、観察、計算、身体動作を結びつける技術として描かれている点が重要である。

■人体と自然を幾何学で捉える視線

荒木飛呂彦の絵には、西洋美術や彫刻を思わせる人体表現が取り入れられてきた。人物の姿勢、重心、筋肉、衣服の流れを強調する独特のポーズは、登場人物の性格や緊張感を視覚的に伝えている。

「スティール・ボール・ラン」では、身体を形や比率、運動の組み合わせとして捉える視線が、回転という技術そのものに組み込まれている。自然の中にある形を観察し、身体と道具の動作へ移すジャイロの技は、数学的な秩序と劇的なアクションを接続する。

荒木は2007年、学術誌「Cell」の表紙イラストも手掛けた。イラストでは、神経伝達物質の放出に関係するタンパク質の分解機構を、人型の「SCRAPPER」とハート形のユビキチンによって視覚化した。複雑な生命現象を擬人化し、動きのある一枚絵へ変換した例である。

悪魔の手のひら、聖人の遺体、回転にも、目に見えない作用を身体や風景の変化として示す同様の視線がある。磁場、過去から受け継がれる情報、数理的な比率といった概念は、それぞれ土地、遺体、鉄球という具体的な対象を通じて物語の中に現れる。

こうした対応関係は、個々の能力を現実の科学で証明するものではない。むしろ、自然や身体に潜む規則を観察し、それを人物の成長や戦いへ結びつける作品の構成を読み解く手掛かりになる。

■2nd&3rd STAGEは9月25日配信開始

2nd&3rd STAGEは全11話で、2026年9月25日からNetflixで毎週金曜日に世界独占先行配信される予定だ。新キャラクターとして、マウンテン・ティムを前野智昭、ホット・パンツを日笠陽子、ファニー・ヴァレンタインを杉田智和が演じる。

砂漠越えを通じて、レースには参加者の順位争いだけではない思惑が入り込み始める。悪魔の手のひらという土地、聖人の遺体をめぐる謎、ジャイロの回転がどのように交差するかが、新たなステージの焦点となる。

地質、生命、数学という異なる研究分野に目を向けると、作中設定をそのまま説明する答えではなく、作品が自然界のどのようなイメージを組み合わせているかが見えてくる。その共通構造を知ることは、砂漠の風景や人物の動作、道具の使い方をより深く味わうための補助線になる。

元記事: Steel Ball Run’s Araki Built Devil’s Palm on Documented Arizona Desert Geophysics

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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