『ミート・ザ・ペアレンツ/フィアンセの襲来』新予告を行動科学で読む 元FBI交渉人が家族に波乱

(Universalpictures.com)[写真拡大]
『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズ最新作『ミート・ザ・ペアレンツ/フィアンセの襲来』の海外版本予告が公開された。アリアナ・グランデ演じる元FBI交渉人のオリヴィアが、グレッグとパムの息子ヘンリーのフィアンセとして一家を訪れ、これまで義父の警戒にさらされてきたグレッグが、今度は息子を案じる父親の側に回る。日本では2027年1月8日に公開される予定だ。
■元FBI交渉人を迎える家族の顔合わせ
本作は、ベン・スティラー演じるグレッグ・フォッカーと、ロバート・デ・ニーロ演じる元CIAの義父ジャック・バーンズの攻防を描いてきたシリーズの第4作である。監督と脚本は、これまでのシリーズで脚本を手掛けてきたジョン・ハンバーグが務める。
グレッグとパムの成人した息子ヘンリーをスカイラー・ギソンド、そのフィアンセであるオリヴィア・ジョーンズをグランデが演じる。オリヴィアは元FBI交渉人で、現在はライフコーチという設定だ。
予告編では、オリヴィアが家族との食事の席で自身の経歴を明かし、交渉人として身に付けた力を使って、ヘンリーを父親の束縛から「解放する」と宣言する。息子を心配するグレッグは、オリヴィアを人の心理を操る訓練を受けた人物として警戒する。
一方、グレッグを長年試してきたジャックは、オリヴィアと早々に打ち解ける。義父に認められようと苦闘してきたグレッグが、かつてのジャックのように疑い深い父親となり、元FBI交渉人のオリヴィアが新たな家族の一員としてその視線を受ける。シリーズの基本構図を世代ごと反転させた設定である。
グランデは、オリヴィアがジャックに気に入られ、ほかの家族からもすぐに受け入れられることがグレッグにとっての悪夢になると説明している。スティラーも、現在の自分が第1作当時のデ・ニーロとほぼ同じ世代になったことが、新作の発想につながったと語っている。
■FBIの交渉手法とオリヴィアの人物像
FBIの危機交渉では、相手の話を注意深く聴き、感情や置かれた状況を理解しながら関係を築くことが重視される。その考え方を段階的に示したものが、「行動変容の階段」と呼ばれるモデルである。
このモデルは、能動的傾聴、共感、ラポール、影響、行動変容という順序で構成される。まず相手の言葉を聴き、感情を理解していることを伝える。その積み重ねによって信頼関係を築き、初めて別の行動や選択肢を提案できるという考え方だ。
危機交渉で使われる傾聴の技法には、相手の言葉を言い換えること、感情を言葉にして返すこと、発言の一部を繰り返して続きを促すこと、自由に答えられる質問を使うことなどがある。相手を一方的に説得するのではなく、対話を成立させるための情報処理と関係構築が中心となる。
オリヴィアの経歴は、こうした交渉手法を家族の顔合わせに持ち込むというコメディー上の仕掛けになっている。グレッグが彼女の能力を「人を操る技術」と見なす一方、交渉人としての傾聴や感情の調整能力は、緊張する場で相手との関係を築くためのものでもある。この認識の食い違いが、両者の対立を生む。
もっとも、予告編が示しているのはオリヴィアの職歴と人物像であり、実際のFBI訓練の内容や特定の交渉モデルをそのまま描写しているかは分からない。行動変容の階段は、彼女が家族の緊張にどう向き合う人物なのかを考えるための補助線になる。
■再登場するポリグラフ
シリーズを象徴する小道具の一つが、ジャックの使うポリグラフ、いわゆる「うそ発見器」である。第1作では、娘の交際相手だったグレッグにジャックがポリグラフを使った。新作の予告編では、オリヴィアが装置につながれ、ヘンリーを「感情的に人質にしている」のかと質問される。
ポリグラフが測定するのは、皮膚の電気的変化、血圧や心拍、呼吸などの生理反応である。うそそのものを直接検出するのではなく、質問に対する反応の変化を記録し、そのパターンから検査者が判断する。
生理反応には、欺こうとする意図だけでなく、不安や恐怖、質問への受け止め方、検査環境など複数の要因が影響する。全米アカデミーズが2003年にまとめた報告書も、ポリグラフの精度は検査方法や対象、利用場面に左右され、特に多数の対象者から潜在的な脅威を見つける保安審査では限界が大きいと指摘している。
こうした性質を踏まえると、ポリグラフの場面には、国家安全保障を連想させる検査装置を家族の顔合わせに持ち込むこと自体のおかしさがある。危機的な状況で相手の話を聴く訓練を受けたオリヴィアと、生理反応から相手の本心を見抜こうとするジャックの対比も生まれる。
オリヴィアが交渉人としての知識によって装置を攻略できるとまではいえない。むしろ、対話によって相手を理解しようとする姿勢と、装置を通じて疑念を確かめようとする姿勢の違いが、両者の人物像を際立たせている。
■家族システム理論から見る世代交代
本作の家族関係を読み解くもう一つの補助線が、精神科医マレー・ボーエンが提唱した家族システム理論である。この理論は、家族を独立した個人の集まりとしてではなく、構成員が互いの感情や行動に影響を与える一つの情緒的な単位として捉える。
理論を構成する概念の一つが「自己分化」である。これは、家族との関係を保ちながら、周囲の感情的な圧力に流されず、自分の考えと行動を維持する力を指す。自己分化の度合いが低い状態では、他者からの承認や拒絶に強く反応し、自分の判断が周囲の感情に左右されやすくなる。
第1作のグレッグは、パムとの結婚を望む一方、ジャックに認められようとするあまり、不安を強めて失敗を重ねていった。その姿には、家族からの承認を求める気持ちが本人の判断や振る舞いに影響するという、自己分化の問題を重ねて見ることができる。
「三角関係」も家族システム理論の主要な概念である。2人の間の緊張が強まると、第三者が関係に加わり、対立や不安を引き受ける。三者の関係は二者だけの場合より安定しやすいが、緊張の位置が移動するだけで、根本的な問題が解消されないこともある。
シリーズでは、グレッグ、パム、ジャックの三者関係が繰り返し描かれてきた。グレッグとジャックの対立にパムが挟まれたり、ジャックとパムの家族関係にグレッグが外部から加わったりすることで、不安と対立の向きが次々に変化する。
新作では、その構造が次の世代へ移る。ヘンリーがオリヴィアを家族に紹介し、父親となったグレッグが二人の関係に介入する。かつてジャックに警戒されたグレッグが、自ら息子のパートナーを疑う側に回る展開は、家族の関係様式が世代を越えて繰り返される「多世代伝達過程」という発想にも通じる。
■オリヴィアがもたらす新しい力学
オリヴィアは、これまでのグレッグとは異なる立場から家族の輪に入る。グレッグがジャックの評価に振り回されたのに対し、オリヴィアは自分の経歴や目的を隠さず、グレッグの過干渉を正面から指摘する。
元FBI交渉人という設定は、家族の不安にのみ込まれず、緊張している相手の言葉や感情を読み取る人物像と結び付く。彼女が実際に家族の対立を和らげるのか、それとも交渉の技術をめぐるグレッグの疑念が新たな騒動を招くのかが物語の焦点となる。
ジャックがオリヴィアを気に入る理由について、予告編だけから心理学的な因果関係を確定することはできない。それでも、警戒心の強いジャックと、緊張した場でも臆せず応じるオリヴィアの組み合わせは、グレッグをいっそう不安にさせる構図として機能している。
同時に、グレッグの変化も重要である。第1作では家族に受け入れられようとする側だったが、本作では自分が家族への入口を管理しようとする。彼の振る舞いは、嫌っていたはずのジャックの態度を次の世代に繰り返すという、世代交代の皮肉を生む。
行動変容の階段が示す傾聴と関係構築、ボーエン理論が扱う家族内の不安と三者関係は、いずれも人間関係を個人の性格だけでなく、相互作用の連鎖として捉える。その共通構造を重ねると、本作の中心にあるのは、誰が正しいかという単純な対立ではなく、家族の中で受け継がれてきた接し方を変えられるかという問いだと見えてくる。
■2027年1月8日に日本公開
『ミート・ザ・ペアレンツ/フィアンセの襲来』には、デ・ニーロ、スティラー、グランデ、ギソンドのほか、テリー・ポロ、ブライス・ダナー、オーウェン・ウィルソン、ビーニー・フェルドスタイン、エドゥアルド・フランコらが出演する。
北米ではUniversal Picturesが2026年11月25日に劇場公開する予定で、日本では東和ピクチャーズと東宝の配給により2027年1月8日に公開される。配信開始時期は発表されていない。
義父に認められようとして失敗を重ねたグレッグが、今度は息子の結婚相手を疑う父親となる。そこへ、人の話を聴き、緊張の中で関係を築くことを仕事としてきたオリヴィアが現れる。元FBI交渉人という設定は、世代を越えて繰り返される家族の対立に、新たなリズムを持ち込む仕掛けになっている。
元記事: Focker-In-Law Trailer: FBI Negotiator Grande Does What Greg Focker Couldn’t in 26 Years
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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